北三陸駅
種市「天野ごめん 誕生日だって 知らながったんだ。」
アキ「え?」
種市「いや もうすぐ潜水士の 資格試験だべ? 毎日 勉強頑張ってるからさ 受かるといいなと思って。」
アキ「わざわざ 買ってくれたんですか?」
種市「うん そごで。」
アキ「高(たけ)!」
種市「だから それ 誕生日プレゼントじゃねんだ。」
アキ「むしろ うれしいです。 全然うれしいです!」
種市「そうか。」
大吉♬『(Ghostbusters)』
アキ「あの。」
種市「え?」
アキ「一つ お願いがあるんですけど。」
種市「何だ?」
大吉♬『(Ghostbusters)』
アキ「もし資格試験…。」
大吉♬『(Ghostbusters)』
アキ「もし資格試験さ 受がったら。」
種市「受がったら?」
大吉♬『(Ghostbusters)』
アキ「受がったら…。 おらと デートしてけろ。」
大吉♬『(Ghostbusters)(Ghostbusters)』
大吉♬『(Ghostbusters)(Ghostbusters)(Ghostbusters)』
アキ「うるせえな もう!」
種市「デートって おめえ。 ここらで デートったって おめえ どごさ行けば いいんだ。」
忠兵衛「うわ~! アキ何やってんだ? おめえ! 夏ばっぱと デュエットだぞ! おい来い!」
アキ「今 行ぐ!」
種市「じゃあ 自分(ずぶん) そろそろ帰るわ。」
アキ「わざわざ すいません。」
種市「うん じゃ。 天野。」
アキ「え?」
種市「デートな。 うん 考えとくわ。」
アキ「はい!」
スナック・梨明日
♬『ああ 港町十三番地』
(掛け声)
忠兵衛「よ~し! 次 春子だ! 歌え。」
春子「いやいや 私は いいよ。」
忠兵衛「歌ってけろ! 昔は おめえ おらが 漁さ出る晩は 必ず一曲 歌ってくれたべ。」
春子「え~!」
忠兵衛「はい みんな拍手!」
(歓声)
アキ「ママ歌って!」
春子「いい いい!」
美寿々「マイク マイク マイク!」
菅原「お父さん ちょっと 飲み過ぎたんでないか?」
春子「うん そう。」
忠兵衛「うるせえ! 24年ぶりなんだど 娘の歌っこ 聴きてえべ なあ! なあ!」
大吉「よし 春ちゃん こうなったら もう 歌わねえと 済まねえべ。」
春子「え~!」
(♬~)
吉田「わ! 懐かしいな! 何だっけ? これ。」
美寿々「映画の主題歌だっぺ。」
<その歌は 20年前の流行歌でした。 なぜ正宗が その曲を入れたのか その真意は 分かりません>
(曲を止める)
春子「やっぱ 無理 無理 無理!」
忠兵衛「何だよ? 歌わねえのかよ。」
春子「うん。」
忠兵衛「変わっちまったな。 昔は おめえ 東京さ行って 芸能人になるって 語ってたのに。 正宗君。」
黒川「はい。」
忠兵衛「知ってた? あいつね『アイドル歌手になる』っつうて 家出したんですよ。」
(黒川の笑い声)
アキ ユイ「え?」
忠兵衛「え? え? え?」
<耳を疑う者 聞き流そうとする者 聞いてなかった者>
弥生「え? え? 今 何言った?」
<楽しかった アキの誕生会が 緊迫した空気に包まれました。 おとうさんが とんでもない爆弾を 落としてしまった事だけは 間違いないようです>
♬(『GHOSTBUSTERS』)
弥生「お~! いけいけ!」
大吉♬『(Ghostbusters)』