回想終了
天野家
春子「夏さんには 一切相談しなかったの。 まあ うすうす感づいてるとは 思うけどね。 いつか熱も冷めるって 思ってたんじゃないかな。」
回想
夏「くっだらねえ!」
春子「お願い! 二度とないチャンスだから 行かせて下さい!」
夏「駄目だ。 芸能界なんて おめえ 水物だ。 何の保証もねえし…。 第一 おめえ 土曜でねえか 学校どうすんだ?」
春子「もともと その日は 休む事になってます。 学校サボって 海女の手伝いするのはよぐても オーディションは駄目なのか!?」
夏「受かったら どうすんだ。 この町さ捨てて 東京で暮らすのか?」
春子「次の週も行ぐ。」
夏「…何?」
春子「10週勝ち抜かないと デビューできないの! 落ちたら その時点で終わりだけど 受かったら 次の週も行ぐ。」
夏「毎週土曜日さ 東京へ通うのか?」
春子「大丈夫だよ。 10週なんて無理だから。 もちろん 1週か 2週は勝ちたいけど 10週なんて無理。」
夏「だったら 行ぐな。」
春子「え?」
夏「途中で負けるって分かってて 大騒ぎして 東京さ行ぐのか? 恥ずかしい。 寝言語ってんでねえ! バカこの!」
春子「母ちゃん…。」
夏「何だ この!」
春子「母ちゃん!」
夏「本気だと思って 真面目に聞いたら… ええ!?『10週なんて無理』だ? 遊びさ行くのか。 違うべ! アイドル歌手になりたくて 行ぐんだべ! だったら なれ! 勝で! 負けた時の事 考えてるぐれえなら 最初から行ぐな! バカこの!」
春子「ごめんなさい!」
夏「『ごめんなさい』でねえ! 本気か遊びか聞いてんだ。 1回 2回勝って どうすんだ。 ゼロか 10しかねえ! どっちだ!? ゼロか! 10か!」
春子「…10です。」
夏「分かった。 ほんなら 行ってよし。」
春子「…ホントに?」
夏「組合長には おらが ちゃんと説得してやる。」
かつ枝「夏さ~ん!」
夏「はい。 はい はい はい。 あっ 組合長。」
長内「こちら 北三陸市の市長さん。 知ってるべ?」
回想終了
スナック・梨明日
黒川「えっ!? 市長が じきじきに来たんですか?」
長内「んだ。 それだけ春ちゃんが 期待されてたって事だ!」
弥生「じぇじぇ! いつの間に。」
回想
市長「明日 北三陸鉄道が開通すれば 観光客も増える。 東京からも人が来る。」
長内「新聞やテレビの取材も来る! ちょうど 海開きで 袖が浜の海女も注目される! こんなチャンス めったにねえべ!」
弥生「おめえしか いねえんだ! 春子 頼む!」
かつ枝「袖が浜の未来のためだ! 頼む! 潜ってけろ!」
夏「あとは おらが話して聞かせっから 悪いようにはしねえがら。」
回想終了