古山家
裕一「夏目千鶴子さんが審査員やってたの?」
音「そう。 まさか こんな形で再会するなんて。」
音「あれ? 歌手になったんだよね? 今も現役?」
音「うん。 帰国されてから いろんな舞台で活躍されて…。『ラ・ボエーム』のミミも やったことあるみたいだから それで呼ばれたのかも。」
裕一「でもさ~ 審査する側と される側が 同級生っていうのは… 複雑だね。」
音「そうね… 千鶴子さんも やりづらかったと思う。」
裕一「お疲れさま。」
音「おお~! アハハ。」
(ドアが開く音)
華「ただいま。」
音「お帰りなさい。」
裕一「お帰り。」
渉「初めまして。 私 中川台高等学校2年 竹中 渉と申します。」
裕一「あっ… うん。 えっと… は… 華の父です。」
音「母です。」
渉「『栄冠は君に輝く』は 私が この世で最も愛する歌です!」
裕一「ああ…。」
渉「先生 どうか サインを頂けませんでしょうか?」
音「いいですよ。 フフフ。」
裕一「…うん。 あっ はい。」
音「渉さんは 華とは いつからお友達なの?」
渉「はい 今年の春に華さんが お友達と 我が野球部の試合を 見に来て下さいまして。」
華「いいじゃない そんなこと。」
音「あら そうですか。」
渉「それで たまにですが お会いさせて頂いています。」
音「あ~。」
渉「ありがとうございます! 感激です! 家宝にします!」
裕一「いやいや そんな… 大したものではない。」
渉「華さん ありがとう!」
華「ううん。」
喫茶店 バンブー
恵「へえ~ 渉君 本当に遊びに行ったんだ! 彼 好青年よね。」
音「ええ。 礼儀正しいし 目標を持って 頑張ってるし すごくいい子でした。」
恵「華ちゃんの気持ちには 気付いてないみたいだけど。」
保「片思いか~ 青春だね。」
音「でも… 少し安心して。 弘哉君のこともありましたし…。」
保「まだまだ若いし これからだもんね。 裕一君は 気が気じゃないだろうけど。」
音「そうなんです。 裕一さん いつも以上に うろたえてしまって…。」
裕一「(くしゃみ)」
(笑い声)
恵「うまくいくといいいわね。」
音「そうですね。 フフフ。」
古山家
玄関前
音「あっ。」
裕一の仕事場
(戸の開閉音)
裕一「(くしゃみ)」
音「裕一さ~ん!」
裕一「うん? あ~ お帰り。 うん?」
音「通った!」
裕一「えっ?」
音「通った! 二次審査 通った~!」
裕一「うそ~!? すごい! よかったね。 あれ? 次 最終だったよね?」
音「次が通れば… 舞台に立てる。」
裕一「すごい すごい すごい! ハハハハ! 頑張っ…。(くしゃみ)」
音「大丈夫?」
裕一「ごめん ごめん。」
音「先生に 報告 行ってきますね。」
裕一「うん! 気を付けてね。」
音楽教室
羽生「はっ… やったわね~! すごいじゃないの。」
音「はい! 先生のおかげです。」
羽生「でも 次が本当の勝負よ。 このままじゃ駄目。 徹底的に弱点を克服しましょう! 少し レッスンしていく?」
音「はい! お願いします!」
羽生「♬『歌声』」
音「はあ…。♬『歌声』」
古山家
玄関
華「ただいま~。」
裕一の仕事場
華「お父さん? どうしたの?」
裕一「あっ… あ~ お帰り。 うん? ううん 何でもないよ。」
華「お父さん! お父さん 大丈夫? どうしたの? すごい熱! えっ どうしたの?」