古山家
音「えっ? お姉ちゃんのところに?」
吟「☎『うん。 明日はお休みだし いいでしょう? ねっ?』」
音「ごめんなさい。 明日 迎えに行くから。」
関内家(吟)
吟「うん。 じゃあね。」
音「☎『おやすみなさい。』」
吟「うん。」
華「本当に泊まってってもいいの?」
吟「もちろん。 さあ 夕ごはんの準備しよう! 手伝ってくれる?」
華「うん。」
吟「さあ…。」
夜
華「最近 自分が 駄目な人間に思えてきちゃって。」
吟「駄目って?」
華「私には お父さんみたいな才能もないし お母さんや渉さんみたいな目標もないし 好きなものも分かんないし 何がやりたいのかも分かんない。」
吟「確かに… 最近 世の中の空気も どんどん変わってきたよね。 婦人代議士が誕生したり 女子大が次々に出来たり 女も どんどん社会に出るべきだって いろんな人が言ってる。 でも… 人それぞれだと思うのよね。 私だって 若い頃は やりたいことなんて なかったもん。」
華「そうなの?」
吟「うん。 たま~に 音や梅を見て 羨ましく思うこともあったけど 夢を追い続けるなんて それはそれで大変そうだし。」
華「何か才能があればって思わなかった?」
吟「うん… 才能って大げさに聞こえるけど 普通の日常の中に 転がってると思うのよね。 人の話を聞くのがうまいとか 家事の手際がいいとか。 それだって才能でしょう? コロッケ上手に揚げられた日は『私 天才!』って思うし。」
華「フフッ…。 私も 吟おばちゃんみたいに なれたらいいのにな。」
吟「まあ… 若いうちは いっぱい悩みなさい。 話なら いつでも聞くから。 ねっ?」
華「ありがとう。」
古山家
音「母親失格ね… 娘に気を遣わせて そのことに気が付かないなんて。 やりたいことやってって言ったのも せっかく自由に謳歌できる時代になったんだし 伸び伸びと羽ばたいてもらいたくて。」
裕一「あの年頃はさ 感受性も強いし のんびり見守ってあげよう。」
音「うん。」
裕一「うん。 電気 消すね。」