夕食
鉄男「音さん これ うまい!」
音「よかった。 たくさん食べて下さいね。」
鉄男「うん。」
裕一「どうしたの? 華。 食べないの?」
音「今日 解剖実習だったみたいで。」
鉄男「へえ~。 看護学校で もう そんなこともやってんだ。」
裕一「大変だね。 そっか。」
鉄男「でも偉いな。 夢に向かって 毎日 努力してる。」
華「そんな大したもんじゃないよ。」
鉄男「立派な夢だよ。 どうして 看護婦 目指そうと思ったんだ?」
裕一「人の役に立つ仕事に就きたいって 思ったんだって。 看護婦さん 華に ぴったりだよね 優しいしさ よ~く気が付くしさ。 前にね 華にね 看病してもらったの。 もう その時ね 安心感がすごかったんだよ!」
鉄男「おい!」
裕一「うん?」
鉄男「俺は華ちゃんに聞いてんだけど。」
裕一「あ~ そうか そうか… ごめん…。」
華「う~ん 人のこと ほっとけないっていうか 幸せになる手伝いができたらなって。」
鉄男「ふ~ん。 そうか きっと いい看護婦さんになれる。 応援してっぞ。」
華「うん。 頑張る。」
鉄男「古山家は みんな 頑張り屋だ。 音さんも 聖歌隊 頑張ってるし。」
音「フフフフ。」
鉄男「裕一は もう 相変わらず 仕事ばっかししてるしな。」
華「お父さんは仕事の虫だから。」
音「頼まれたら断れないんです。」
鉄男「俺には まねできねえ。 んっ ラジオドラマ 時々聞いてっぞ。」
(時報)
裕一「本当?」
鉄男「『さくんらんぼ大将』。」
裕一「へえ~!」
音「福島が舞台なのもいいですよね。」
裕一「うれしいね。 池田さんに伝えとく。」
華「ねえ 鉄男おじさんって どんな子どもだったの?」
裕一「いいやつだったよ ただね 最初 ちょっとだけ怖かったの。」
華「けんか強そうだよね。」
裕一「強かったよ! しょっちゅう けんかしてたよね。3人まとめて こう ボッコボコにしてさ 上級生に飛び蹴りしてたんだから!」
(笑い声)
華「すごい!」
鉄男「全部 売られたけんかだ 自分からは仕掛けてねえ。」
音「あら かっこいい。」
鉄男「ありがとう。」
華「そんな けんかばっかりしてさ 親に怒られなかった?」
鉄男「さあ? どうだったかな?」
華「鉄男おじさんって きょうだいは何人…。」
裕一「ねえ この トマト おいしいね。これ うちの?」
音「でしょ。 甘いの。」
裕一「あ~。」
音「んっ…。」
裕一「すごい甘いよ。」
鉄男「んっ… 甘い! ハハッ。」
音「でしょ?」
コロンブスレコード
鉄男「映画の主題歌?」
杉山「はい。 映画会社が社運を賭けた 勝負作だそうです。 今回の依頼は 監督からの じきじきのご指名です。」
鉄男「ありがとうございます。 どんな映画ですか?」
杉山「下町の大家族を描いた人情喜劇で 主題歌の歌詞は 家族の絆をテーマにしてほしいとのことです。」
鉄男「ちょっと… 考えさせてもらってもいいですか?」
智彦のラーメン屋
鉄男「こんばんは。」
智彦「あ~ いらっしゃい!」
ケン「いらっしゃい!」
智彦「どうぞ。」
池田「おっ よう!」
鉄男「お~ 池田さん。 お久しぶりです。 ラーメン お願いします。」
智彦「はい。」
池田「うん! やっぱ うまいな ここのラーメンは。 スープがいいよ。 今夜も ぐびぐび飲んじゃうぞ。」
ケン「味が濃いと食べてて飽きが来るでしょ。 うちは ほかと違って 塩気を抑えて…。」
智彦「な~に 生意気言ってんだよ。」
吟「ケン。」
ケン「うわっ! 来た…。」
吟「アハハ どうも いらっしゃい。」
鉄男「お迎えですか?」
吟「ええ。 今日は早く帰ってくるんじゃなかったの?」
ケン「忙しいんだよ。 これから 洗い物も仕込みもあるし。」
吟「さあ 帰るわよ~。」
ケン「え~?」
吟「少しは勉強しなさいよ。 落第したら どうするの?」
ケン「ラーメン屋 継ぐんだから 勉強なんか どうだって…。」
吟「何度も言ってるでしょう。 これからの時代 学があって損することはないの。」
鉄男「ケン。 吟さんの言うことは聞いとけ。 心配してくれる人がいんのは ありがてえことだぞ。」
ケン「分かってるよ。」
吟「お騒がせしました。 あなた 先に戻るわね。」
智彦「おう。 気を付けろよ。」
ケン「母ちゃん これ 洗濯して。」
吟「えっ? 嫌だ おっきな染み! どうしよう…。」