古山家
音「鉄男さんって 家族で夜逃げしたって言ってたよね?」
裕一「うん…。 再会した時にはね もう新聞記者になってて 間のこと よく分かんないんだ。 家族も どうなったのか…。」
音「そっか…。 きっと いろいろあったんでしょうね。」
裕一「うん… 何にも言わないけどね。 大将の中で 整理がついてればいいんだけどな…。」
喫茶店 バンブー
恵「は~い どうぞ。」
鉄男「どうも。 んっ! うん… うまい。 香りもいい。」
保「気付いてくれた? 今日のは ちゃんとした豆でいれてんだよ。」
恵「コーヒー豆も 随分 手に入りやすくなったの。」
鉄男「ふ~ん。 バンブーのコーヒーは やっぱ これじゃねえと。 なあ 裕一?」
裕一「うん? うん?」
鉄男「どした?」
裕一「いや…。 大将さ… 杉山さんから聞いたんだけど 映画の主題歌の話 断ったんだって?」
鉄男「ああ。 ここんとこ ずっと忙しかったし 少しペースを落としてもいいかと 思ってな。」
恵「のんびりする時間も大切よね。」
保「そうそう。 メリハリ大事。」
鉄男「ですよね。」
裕一「あの もしさ… 時間があるなら 一つ 相談したいことがあるんだけど。」
古山家
裕一「はい。」
鉄男「うん? 福島信夫小学校…。」
裕一「そう 僕らの母校。 校長先生からね 校歌 作ってほしいって頼まれたの。 もしよかったらさ 大将 歌詞 書いてくれない? 好きなように書いてくれて構わないって。 大将が一緒に作ってくれたら 藤堂先生も喜ぶと思う。」
鉄男「分かった。 やらしてもらうよ。」
裕一「よかった。 でね… ここ。 校歌が完成したら 学校で お披露目会するから是非 来てほしいって。 大将 一緒に福島行こう。」
鉄男「…だな。 そろそろ 藤堂先生の墓参りにも行きてえし。」
裕一「よし 決まり!」
完成した校歌のお披露目会に 出席するため 裕一と鉄男は 福島に向かうことになりました。
華「遅れるよ。」
裕一「うん!」
音「じゃあ 気を付けて。 お義母さんと浩二さんに よろしくお伝えください。」
裕一「うん! 行ってきます。」
華 音「行ってらっしゃい。」
福島
今回の里帰りが 鉄男の人生にとって 忘れられない旅になるとは この時は 思ってもみませんでした。