居間
華「梅ちゃん。」
梅「うん?」
華「これ おばあちゃんにあげて。」
梅「わっ 華ちゃん作ったの?」
華「うん。」
梅「かわいい~。 おばあちゃん 喜ぶよ。」
華「本当?」
梅「うん。」
音「今度は お母さんと一緒においでん。」
梅「そうだね。」
裕一「華~ 学校 遅れるよ。」
華「は~い! 梅ちゃん またね。」
梅「またね。」
音「行ってらっしゃい。 気を付けてね。」
華「行ってきま~す。」
音「それ 出版社にもっていく原稿?」
梅「うん。 大事なものだから 慎重に扱わんと。 よし…。 よし!」
梅「何? これ。 音楽挺身隊? こんなのあるんだ。」
音「行かんけどね。 柄じゃないし。」
梅「えっ? でも ここ入ったら 歌えるんでしょう?」
音「いや… でも ほら こういうのは向いとらんから。」
梅「ふ~ん… その程度なんだ。」
音「えっ?」
梅「お姉ちゃんの歌に対する気持ち。 こんな時まで大好きな歌ができるって 幸せなことじゃん。 戦争がもっと激しくなったら できんくなるかもしれん。 なのに 何でやらんの? 庭仕事やっとるだけでいいの? まあ… 私が口出すことでもないけど。」
玄関
五郎「お世話になりました。 今度は いい報告持ってきます。」
裕一「待ってます。」
音「気を付けてね。」
梅「またね。」
裕一「うん。」
庭
裕一「久しぶりに 梅ちゃんと五郎君 会えてよかったね。 じゃあ 仕事 行ってくるかな。」
音「ねえ 裕一さん。」
裕一「うん? うん?」
音「私… やってみようかな。」
裕一「何を?」
音「音楽挺身隊。」
裕一「えっ?」