宴会
鉄男「いや~ 木枯さんの曲は名曲! 全部 名曲だから!」
裕一「『酒は涙か 溜息か』 いや… これが一番かな~。 でもね『丘を越えて』も捨て難い!」
鉄男「だから 言ってっぺ 全部名曲だって。」
裕一「ハハハハハ。」
木枯「今は さっぱりだけどな。 全然書いてないし。」
裕一「何で?」
木枯「書いても通らないんだよ。『お前の音楽は軟弱だ。 もっと 世の中の空気に合わせろ』だってさ。」
裕一「ふ~ん…。」
木枯「でも 俺 そういうのって無理だし。」
鉄男「いや~ もう それで正解! 木枯さんの個性 無理に曲げる必要なんてないんですよ。」
裕一「うん そうだね! その方がね 木枯君らしいよ。」
木枯「ありがとう。」
鉄男「俺も正直 今の音楽業界には違和感ある。 戦意高揚 忠君愛国 そればっかしじゃ つまんねえし やりがいもねえと思ってな…。 だから一旦 作詞から離れてみることにしたんだ。」
裕一「だから新聞社に行ったんだ。」
鉄男「うん。」
木枯「裕一は大したもんだよ。」
裕一「うん?」
木枯「求められてる音楽を 質を落とすことなく 次々に生み出してる。」
裕一「いや… 僕はね ただ お国のために 頑張ってる人を応援したいだけ。 それが今の僕にできる たった一つのことだからね。」
木枯「真面目だね。」
(笑い声)
酔いつぶれる裕一と鉄男
木枯「頑張れよ。」
居間
音「できた! あっ… ごめんなさい。」
木枯「2人とも寝ちゃいました。」
音「ああ… 随分飲んだんですね。 お布団 出さなきゃ。 木枯さんも泊まっていかれます?」
木枯「ああ… いや ちょっと これが待ってるんで。」
音「あっ… フフッ。」