仕事部屋
茂「『墓場の鬼太郎』の歌…?」
豊川「はい!」
茂「例のテレビの件ですか?!」
豊川「ああ すいません。 そっちは まだ 埒が明かなくて。 これは また 別の話です。」
茂「はあ…。」
豊川「人気漫画のイメージソングを 10曲ほど作って 『少年ランド人気漫画ソング集』という LPレコードにする企画なんです。」
茂「ふ~ん。」
豊川「ラインナップは こういう予定で。」
茂「う~ん。」
豊川「それで… 『墓場の鬼太郎』の作詞は 水木先生にお願いしたいんですが。」
茂「またですか?」
豊川「あ いや 原作者が詞を作るというのが 今回のレコードの売りなんですよ。」
茂「しかし 仕事も詰まっとるしなあ。」
豊川「そこを ひとつ お願いします。 前に 作って頂いた 『悪魔くん』のマーチも好評でしたし。 3番まで お願いします。」
茂「え~っ!」
台所
いずみ「わあ 水ようかん! おいしそう!」
布美枝「いつも すいません。」
北村「いいえ。」
いずみ「漫画から歌を作るなんて 面白そうですね。」
北村「ああ あの うちのグループのレコード会社が 漫画の人気に あやかろうというんです。 で 今回は 『少年ランド』の人気漫画 トップ10を そろえました!」
布美枝「ほんなら そこに『墓場の鬼太郎』も 入っとるんですね。」
北村「もちろんです。 『鬼太郎』の人気 ググッと 上がってますからねえ!」
菅井「北村さん やっぱり ここで 油 売ってる。」
北村「また来た…。」
菅井「豊川さん 呼んでますよ~!」
北村「今 行きますよ。 それじゃ また…。」
いずみ「はい。 これ 仕事部屋に持っていくね。」
布美枝「あ うん 頼むわ。」
菅井「あ それ 僕 持っていきます!」
いずみ「はい?」
菅井「いずみさん 来なくていいっすからね!」
いずみ「はあ。」
夜
(犬の遠ぼえ)
布美枝「お父ちゃん 『鬼太郎』の歌 作るんですってね。」
茂「ああ また 詞を頼まれたわ。」
布美枝「今度は どげな歌にするんです?」
茂「う~ん…。 うんと恐ろしくしてみるかねえ。」
2人「ふ~ん。」
布美枝「レコードになるなんて 楽しみだねえ 藍子。 ついとる…。」
茂「漫画の仕事は詰まっとるし 『鬼太郎』の歌は 作らねばならんし…。」
布美枝「お父ちゃん お茶は?」
茂「あっち 持ってきてくれ。 朝までに ネームやるけん。」
布美枝「はい。」
茂「ああ 『鬼太郎』の歌ねえ…。 どげするかなあ。」
いずみ「頭の中 仕事だらけだね。」
布美枝「うん…。」
いずみ「少しは 断ったら ええのに。」
布美枝「仕事が あるのは ありがたい事だよ。 仕事がない苦しみは 身に染みとるけん。」
いずみ「ふ~ん…。」
布美枝「ねえ いずみ。」
いずみ「ん?」
布美枝「この間から ちょっこし 気になっとる事が あるんだけど。」
いずみ「何?」
布美枝「北村さんと菅井さん。」
いずみ「うん。」
布美枝「あんたの気を引こうと しとるんじゃないのかしら?」
いずみ「そげかなあ?」
布美枝「仕事関係の人達だけん 軽はずみな事は せんでね。」
いずみ「分かってるって。」
布美枝「そろそろ あんたも 大塚に戻らんと いけんのだし。 こっちで どうこう あってもね…。」
いずみ「心配いらんって。 私 何とも 思っとらんもん。 けど モテて悪い気は せんね。」
布美枝「いずみっ…。」
いずみ「冗談…。 フフフッ!」
布美枝「もうっ…。」