連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第109話「鬼太郎ブームがはじまった」

仕事部屋

茂「『墓場の鬼太郎』の歌…?」

豊川「はい!」

茂「例のテレビの件ですか?!」

豊川「ああ すいません。 そっちは まだ 埒が明かなくて。 これは また 別の話です。」

茂「はあ…。」

豊川「人気漫画のイメージソングを 10曲ほど作って 『少年ランド人気漫画ソング集』という LPレコードにする企画なんです。」

茂「ふ~ん。」

豊川「ラインナップは こういう予定で。」

茂「う~ん。」

豊川「それで… 『墓場の鬼太郎』の作詞は 水木先生にお願いしたいんですが。」

茂「またですか?」

豊川「あ いや 原作者が詞を作るというのが 今回のレコードの売りなんですよ。」

茂「しかし 仕事も詰まっとるしなあ。」

豊川「そこを ひとつ お願いします。 前に 作って頂いた 『悪魔くん』のマーチも好評でしたし。 3番まで お願いします。」

茂「え~っ!」

台所

いずみ「わあ 水ようかん! おいしそう!」

布美枝「いつも すいません。」

北村「いいえ。」

いずみ「漫画から歌を作るなんて 面白そうですね。」

北村「ああ あの うちのグループのレコード会社が 漫画の人気に あやかろうというんです。 で 今回は 『少年ランド』の人気漫画 トップ10を そろえました!」

布美枝「ほんなら そこに『墓場の鬼太郎』も 入っとるんですね。」

北村「もちろんです。 『鬼太郎』の人気 ググッと 上がってますからねえ!」

菅井「北村さん やっぱり ここで 油 売ってる。」

北村「また来た…。」

菅井「豊川さん 呼んでますよ~!」

北村「今 行きますよ。 それじゃ また…。」

いずみ「はい。 これ 仕事部屋に持っていくね。」

布美枝「あ うん 頼むわ。」

菅井「あ それ 僕 持っていきます!」

いずみ「はい?」

菅井「いずみさん 来なくていいっすからね!」

いずみ「はあ。」

(犬の遠ぼえ)

布美枝「お父ちゃん 『鬼太郎』の歌 作るんですってね。」

茂「ああ また 詞を頼まれたわ。」

布美枝「今度は どげな歌にするんです?」

茂「う~ん…。 うんと恐ろしくしてみるかねえ。」

2人「ふ~ん。」

布美枝「レコードになるなんて 楽しみだねえ 藍子。 ついとる…。」

茂「漫画の仕事は詰まっとるし 『鬼太郎』の歌は 作らねばならんし…。」

布美枝「お父ちゃん お茶は?」

茂「あっち 持ってきてくれ。 朝までに ネームやるけん。」

布美枝「はい。」

茂「ああ 『鬼太郎』の歌ねえ…。 どげするかなあ。」

いずみ「頭の中 仕事だらけだね。」

布美枝「うん…。」

いずみ「少しは 断ったら ええのに。」

布美枝「仕事が あるのは ありがたい事だよ。 仕事がない苦しみは 身に染みとるけん。」

いずみ「ふ~ん…。」

布美枝「ねえ いずみ。」

いずみ「ん?」

布美枝「この間から ちょっこし 気になっとる事が あるんだけど。」

いずみ「何?」

布美枝「北村さんと菅井さん。」

いずみ「うん。」

布美枝「あんたの気を引こうと しとるんじゃないのかしら?」

いずみ「そげかなあ?」

布美枝「仕事関係の人達だけん 軽はずみな事は せんでね。」

いずみ「分かってるって。」

布美枝「そろそろ あんたも 大塚に戻らんと いけんのだし。 こっちで どうこう あってもね…。」

いずみ「心配いらんって。 私 何とも 思っとらんもん。 けど モテて悪い気は せんね。」

布美枝「いずみっ…。」

いずみ「冗談…。 フフフッ!」

布美枝「もうっ…。」

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