連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第116話「妖怪いそがし」

布美枝「(ため息) また 幼稚園から 呼び出しだ。 あら? 喜子は どこへ行ったんだろうか?」

茂「おい 仕事の邪魔するけん つまみ出してきたぞ。 ほれ!」

喜子「つまんないの。」

布美枝「こら! 今日は あっちに行ったらいけんと 言ったでしょ。 だって 人が いっぱいいて 楽しそうだもん。」

布美枝「ほんとに あんたは 何べん 言っても きかんのだけん…。 お母ちゃん また幼稚園の先生から 呼び出されたよ。」

茂「どげした?」

布美枝「今 電話があったんです。 喜子が逃亡して困るって。」

茂「逃亡?」

布美枝「今日は お絵描きの時間に いなくなって。」

茂「うん。」

布美枝「先生が捜したら 1人で 外の ブランコ乗っとったって。 ブランコなら 自由時間に乗れば ええでしょう?」

喜子「自由時間は ダメだよ。」

布美枝「どうして?」

喜子「取り合いになるから 喜子 乗れないもん!」

布美枝「あら?」

茂「ははあ。 みんなが部屋におる間なら 好きなだけ ブランコに乗れるなあ。」

喜子「うん。」

茂「そりゃ ええ考えだ。」

布美枝「感心しないで下さいよ。」

茂「ブランコの何が悪い。」

布美枝「そげじゃなくて 喜子が しょっちゅう 部屋を抜け出すんですけん 集団行動が できんのじゃないかって 先生方が心配しとって。」

茂「心配せんでも そのうち直る。」

布美枝「けど…。」

茂「とにかく 今日は 喜子を 仕事部屋に入れるな。 頼んだぞ。」

布美枝「はい。 お父ちゃんは ああ言うけど 喜子 このままで大丈夫だろうか。 (ため息)」

夫婦の寝室

(ミシンをかける音)

藍子「ただいま!」

布美枝「おかえり。」

藍子「何 縫ってるの?」

布美枝「あんた達の おそろいのブラウス。 袖 ちょうちん袖にする? 台所に 草餅あるよ。 豊川さんの お土産だけん 上等だよ。 どげしたの?」

藍子「何で お父ちゃんの仕事 『漫画家』って書いたの?」

布美枝「何の話?」

藍子「学級の連絡簿だよ。 前は『自営業』って 書いてたじゃない?」

布美枝「そうだっけ?」

藍子「うん。」

布美枝「ええじゃない お父ちゃんは 漫画家なんだけん。」

藍子「自営業にしといて ほしかったな。」

布美枝「何 言っとるの?」

藍子「だって 嫌なんだもん。 お父ちゃんの漫画の事 知られるの。」

布美枝「え?」

藍子「もう 学校中に 知れ渡っちゃったよ。」

布美枝「藍子 あんた お父ちゃんが 漫画家だって事 知られたくないの?」

藍子「うん。」

布美枝「お母ちゃん 悲しいよ。 藍子が そげな事 言うなんて。」

藍子「えっ?」

布美枝「お父ちゃんは 一生懸命 漫画 描いとるんだよ。 何にも 恥ずかしい事してない なして 隠さんといけんの?」

藍子「そうだけど…。」

布美枝「何?」

藍子「もういいよ。」

布美枝「ちょ ちょっと 待ちなさい! 藍子らしくないねえ! 何か 嫌な事でもあったの?」

藍子「別にない…。」

布美枝「あのね お父ちゃん 今は いっぱい お仕事あるけど 昔は なかなか 認められなくてね。 けど それでも くじけんで 漫画 描き続けとったんだよ。」

藍子「ちょっと 覚えてる。」

布美枝「お母ちゃん そういうお父ちゃん 立派だなあと思っとるの。 だけん 『お父ちゃんは漫画家です』って 胸 張って言えるよ。」

藍子「うん 分かった。 ブラウス ちょうちん袖にしてね。」

布美枝「はい。」

藍子「草餅 食べてくる。」

客間

藍子「お母ちゃんには 言っても分かんないよね。」

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