連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第132話「おかあちゃんの家出」

台所

徳子「このポテトサラダ 美智子さんの所で 食べたのと 同じ味!」

布美枝「直伝ですから。」

徳子「う~ん。」

美智子「うちに 節約料理を 習いに来てたものねえ。」

布美枝「はい。」

靖代「私も研究しようかな 節約料理。」

美智子「あら どうしたの?」

靖代「最近さ 内風呂の家が増えたでしょう。 銭湯に来る お客さんも めっきり減っちゃって…。」

徳子「それ言ったら 昔ながらの床屋も 美容院に押されて厳しいんだよ~。」

和枝「乾物屋だって スーパーに 客 とられて ここんとこ さっぱり。」

美智子「嫌ねえ。 みんなして グチ 言っちゃって。 靖代さんには あれが あるじゃない。 ほら 化粧品の…。」

靖代「ロザンヌレディで ございま~す。」

(笑い声)

徳子「懐かしい!」

靖代「もう 無理 無理。」

徳子「無理 無理。」

靖代「あんた 随分じゃないのよ。 ハハハ…。」

徳子「ねえ ねえ こんな大声で騒いでいたら こちらの姑さんに 叱られるんじゃないの?」

布美枝「今日は いませんから。 2人で 熱海に行ってます。」

美智子「あら 残念。 先生のご両親にも お会いしたかったわ。」

靖代「おじいちゃんが 面白いのよ。 時々 お芝居のまねなんか してくれちゃってさ。」

徳子「でも いじめられてんのよね。 イカルさんに。」

美智子「イカルさんって?」

布美枝「母のあだ名です。 よく怒るから イ カ ル。」

美智子「まあ すごい。 うちのおばあちゃんより強そう。」

徳子「結構 いい勝負かも ねえ?」

(笑い声)

靖代「あ~ おばあちゃんに会いたいなあ ねえ? そうだ 私 千葉まで おばあちゃんに 会いに行っちゃおうかな。」

美智子「来てよ。 おばあちゃん 喜ぶから。」

徳子「うるさいのが来たって また 怒られるんじゃないの? 昔みたいに ねえ?」

美智子「そうだったわねえ。」

靖代「おばあちゃん すごかったもんねえ。」

中庭

美智子「先生 まだ お仕事?」

布美枝「はい。 毎日 夜中まで 働いとるんです。」

美智子「そう…。 努力家だものねえ 昔から…。」

布美枝「いつも 言ってます。 『漫画は 厳しい世界だ。 油断したら また 元の貧乏に 戻る事になる』って。」

美智子「そう…。 ん? どうかした?」

布美枝「私… 時々 あの頃が 懐かしくなるんです。 明日のお米の心配したり 電気が止められたり…。 毎日が 貧乏との闘いなのに 懐かしいだなんて おかしいですよね。」

美智子「ううん。 ちっとも おかしくないわよ。」

布美枝「え?」

美智子「だって 一生懸命だったでしょう 布美枝ちゃん。 貧乏が 懐かしいんじゃないの。 きっと… 一生懸命だった その時間が いとおしいのよ。」

布美枝「美智子さん…。」

美智子「でもね 今の暮らしも 後で 振り返ったら きっと 懐かしく思うわよ。 だって… 今も 頑張ってるでしょう。 藍子ちゃん達 元気に育てようって。 先生を 見失わないように。」

布美枝「はい…。」

茂の仕事部屋

茂「そろそろ 作戦を立て直す 時期かもしれんな…。」

中庭

美智子「そう 弟さんが…。 お気の毒に…。」

布美枝「半年前に こっちに出てきて 元気に帰っていったんです。 落ち込んどったら いけんのですけど…。」

美智子「ねえ 布美枝ちゃん… 私ね 亡くなった人は いなくなってしまう訳じゃないと 思うのよ。 目に見えないけど ずっと近くにいて 見守ってくれてるんじゃないかな。 実はね… おばあちゃん 近頃 あんまり具合よくないの。」

布美枝「えっ…。」

美智子「無理もないわよね。 年も年だし…。 でもね ずっと おばあちゃんと 一緒に やってきたでしょう。 いなくなったら どうしようって もう考えただけで 胸が苦しくて…。」

美智子「そしたらね おばあちゃんが言ったの。 『私は どこにも行きゃしないよ。 智志と一緒 あんたのそばに いるから安心しな』。 なんだか ほっとしたわ。」

布美枝「見えんけど… おるんですね。」

美智子「え?」

布美枝「あ いえ…。 おばばが… 亡くなった祖母が よく そう言ってたんです。 『みんな 目には見えんものに 守れて 生きているんだ』って。」

美智子「そうね… 見守られて 包まれて… なんとか やってんのかも しれないわね。」

布美枝「はい…。」

美智子「あ~ きらいな星空…。」

台所

(小鳥の鳴き声)

茂「おい 子供達 連れて 旅行に行くか。」

布美枝「富士山ですか?」

茂「いや もっと遠くが ええな。 いずれ 移住する南方の楽園を 下見に行くか。」

布美枝「仕事は どげするんです?」

茂「うん… ボチボチ 減らしていこうかと 思っとる。 貧乏よけ大作戦は 作戦変更だ。 人間は 南方の楽園の人達のように ゆったり生きるのが 本当だけん。 これからは 仕事は 一日 3時間にする。」

布美枝「3時間?!」

茂「後は のんびり 談笑して過ごすんだ。 そのかわり 金は あまり入ってこんけん ぜいたくは できんぞ。」

布美枝「はい。」

茂「飯は まあ ラーメンに ネギでも 浮かんどれば よしとして…。 いや 食いもんが あまりに貧しくては 楽園とは言えんな。」

布美枝「フフッ…。」

茂「なんだ! 人が まじめに話しとるのに。」

布美枝「お父ちゃんが 仕事せずに いられるはずないわ。 体の事 考えて ご飯くらいは ゆっくり食べて下さい。」

茂「ああ。 ゆっくりな…。」

布美枝「ほら 言ってるそばから…。」

茂「ふ~ん。」

<遠い南の島まで行かなくても 茂の笑顔があれば ここも 少しは楽園に近づける。 そんな気がする 布美枝>

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