連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第23話「さよなら故郷(ふるさと)」

道中

運転手「奥さん ここが 丸の内です。」

布美枝「うわ~! ビルが いっぱいある。」

運転手「先に見えるのが 皇居です。」

布美枝「は~! ほんに東京なんだわあ! あの 東京タワーは どの辺りにあるんでしょうか?」

茂「ちっと 方角が違いますなあ。」

運転手「あ 回りましょうか?」

茂「いや 今日は 急いどるんで。 また 今度で ええですね。」

布美枝「あ はい。 私 こげな町に暮らすんだわ! は~!」

茂「うちは もっと ず~っと 奥の方ですけどねえ。」

運転手「私 調布の方は 余り走らないもので 近くになったら 道を教えて下さい。」

茂「はいはい。 しかし 車は ええもんですなあ。 道を歩いとる人より ちっと 偉くなった気がしますわ。」

運転手「これから どんどん増えますよ。 3年後の東京オリンピックに向けて 道路の整備も 進んでますからね。 調布の方も 随分 便利になったでしょう?」

茂「いやいや うちの方は まだまだ のどかなもので。」

運転手「ああ 武蔵野の面影を残す ですか? 風流ですなあ。」

茂「風流というのとは ちょっと違うかなあ。」

布美枝♬『楽し都 恋の都 夢のパラダイスよ 花の東京 楽し都 恋の都』

<ピカピカの車に乗って 東京の 真ん中を走り抜けていく。 夢のような出来事に 布美枝は 晴れがましい気持ちで いっぱいでした>

<ところが…>

運転手「まだ 先ですか?」

茂「もうすぐです。」

<華やかな都心を走り抜けると 車は どんどん 郊外に向かっていきました>

布美枝「東京にも こげに畑があるんですね?」

運転手「あ~っ!」

(急ブレーキ)

運転手「すいません!」

(牛の鳴き声)

茂「もう この先です。」

村井(水木)家

布美枝「あの~ ここですか?」

茂「ええ ここです。」

(カラスの鳴き声)

<それは 大変なボロ家でした>

布美枝「ここ? 嘘でしょ…。」

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