茂「わっ。 兄貴からのお祝い。 ほんに 心ばかりだな~。」
布美枝「何ですか? あら…。」
茂「兄貴 働いてた会社が倒産して 今 大変な時なんですわ。」
布美枝「『お仕事 決まりそう』って おっしゃってましたが よかったですね。」
茂「う~ん 今度は 決まるかな…?」
(ノック)
茂「何だ 忘れ物か? おお!」
電気屋「電気代の集金で~す。」
茂「今日は ちょっと 都合が悪い。」
電気屋「3か月分 たまってるんですよ。」
茂「ついでに もう1か月 ためといてくれ。」
電気屋「ダメで~す。」
茂「1週間 待ちなさい。 1週間後には 必ず。」
電気屋「もう 待てません。 『月末には払う』と言うから 私 何度も来てるのに ずっと お留守だったじゃないですか。 まさか 居留守 使ってたんじゃ?」
茂「人聞きの悪い事 言ったら いけん。 家庭の事情で 実家に戻ってたんだよ。」
ガス屋「あっ 村井さん 夜逃げしたのかと思いましたよ。 プロパンの集金です。」
水道屋「水道代 お願いします。」
茂「あっ 水道屋まで。」
ガス屋「今日という今日は もらいますよ。」
電気屋「せめて うちだけでも。」
水道屋「こっちを先に。」
茂「どこか 1か所だけ払うというのも 不公平だ。 こうしよう 今日のとこは 皆さんに 諦めて頂いて…。」
3人「ダメです!」
茂「みんなが けんかしたら いけない。 今日のところは…。」
3人「ダメです!」
布美枝「あの~ これ…。」
茂「まったく! うっかり 戸も開けられん。 すまんですな。 来た早々に。」
布美枝「いいえ。 嫁入り道具の代わりに 親が 少し持たせてくれましたけん。」
茂「あれ 仕上げて 持っていったら すぐ 金が入りますから。」
布美枝「それまでのやりくりは これで。」
飯田家
ミヤコ「暁子から 電話が あったわ。 旦那さんの会社の車で 布美枝達を 家まで 送ってくれたんだって。」
邦子「まあ そげですか。 家 どげなとこだか 言っとられました?」
ミヤコ「それが 暁子は 行っとらんのだって。 今度 見に行って 報告してくれる と言っちょった。」
邦子「フミちゃん 今頃 東京で ご飯の支度 しとるんでしょうね。」
ミヤコ「う~ん。 仲よく やってくれると ええけどねえ。」
水木家
居間
布美枝「おかず どげしよう。 お店の場所も分からんし…。」
仕事部屋
布美枝「あの… お仕事中 すんません。」
(ペンを走らせる音)
布美枝「入りますよ。」
(ペンを走らせる音)
(カラスの鳴き声)
布美枝「えっ?! 嫌! キャッ!」
<それは これまで 布美枝が 見た事もない 気味の悪い絵でした>