布美枝「フライパン 鍋 お玉 菜箸 ザル大小 お皿… あ! おみそ。」
(ノック)
「お~い。 おるか?」
(ノック)
布美枝「すんません。 お客さんですよ。 あの~ お客さんですよ!」
茂「客? 誰だ…。」
布美枝「私 誰が 誰か 分からんので ちょっと 出てみて下さい。」
茂「チョ チョッと… 声を出したら いかん。 おらん振りをしなさい。」
布美枝「えっ?」
茂「集金かもしれん。 今日 来られても どうにもならん。」
(ノック)
茂「し~っ。」
(ノック)
雄一「茂~ おらんのか? 俺だ。」
茂「あ 何だ 兄貴か…。」
布美枝「あ…。」
雄一「いや~ 大変だったでしょう。 1週間で 見合いして 結婚式 挙げて 嫁さんまで 連れて帰ってくるとは 僕も 驚きですわ。 ハハハ。」
布美枝「いいえ。 どうぞ よろしくお願いします。」
雄一「いや これは どうも。」
茂「これ おかげで 助かったわ。」
雄一「うん。」
布美枝「あ! 今 お茶 入れます。」
雄一「どうも すみません。」
布美枝「茶筒は… あ! あった。 …ない!」
雄一「背広と ワイシャツと…。 おう! このネクタイは お前のだ。」
茂「あ いかん。 大事な財産が…。」
茂 雄一「ハハハ。」
布美枝「あれ? あの時の背広…?」
雄一「帰ってきて 早々 悪いけど 俺も 急に 背広が 入り用になってな。」
茂「仕事の話か?」
雄一「おう。 重役面接だけん。 採用で決まりだろう。 今度のとこはな 給料も しっかりしとるし うちの奴も 期待しとるんだわ。」
茂「そりゃ ええな。」