連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第26話「花と自転車」

布美枝「締め切りが迫っとるんだって。 見合いだ 結婚式だで 向こうに 10日もおったでしょう。 その分の遅れを取り戻さんと 大変らしいが。」

暁子「でも 初めて会ったのに 挨拶も そこそこに。」

布美枝「ごめんなさい。」

暁子「大体 西も東も分からん フミちゃんを 一人で 買い物に行かせるなんて ひどいじゃない? 家だって 期待外れね。 こんなに 荒れてるし 駅から遠いし 周りは 畑ばっかり。 こんな不便な場所とは 思わなかった。 幾ら男所帯だって あんまりだわ。 結婚の準備 一つも してないじゃないの。」

布美枝「急に話が進んだんだけん 暇がなかったんだと思うけど。」

暁子「ああいうものが 似合う家だとばっかり。」

布美枝「うん。」

雄一「茂 おるか?」

(ノック)

雄一「邪魔するぞ!」

布美枝「あ。」

雄一「あ!」

布美枝「お兄さん。」

雄一「あ~ お客さんですか?」

布美枝「東京に住んどる 上の姉です。」

暁子「初めまして 布美枝の姉の 暁子でございます。 妹が お世話になりまして!」

雄一「こちらこそ 弟が世話になります。」

佐知子「ほら あんた達 早く入りなさい。」

雄一「ほれ!」

佐知子「あ!」

雄一「昨日 話しました 家内の佐知子です。 健太と波子。」

佐知子「初めまして 仲よくして下さいね。」

布美枝「初めまして。」

雄一「お前達も挨拶しなさい。」

波子 健太「こんにちは!」

布美枝「こんにちは!」

雄一「茂 仕事ですか?」

布美枝「あ! 今 呼んできます。」

雄一「ああ~ いいんです。 勝手は 分かっとるから。 ほら 支度してこい。」

佐知子「は~い!」

布美枝 暁子「え?」

雄一「風呂もらいに 来ただけですから。 お~い 茂! 風呂もらうぞ!」

茂「おう!」

雄一「ほら お前達も行ってきな。」

波子 健太「は~い!」

雄一「市営住宅には 風呂がないもんで 週3日は ここの風呂を使っとるんですわ。」

暁子「まさか このれからもという事は ないですよね。」

雄一「は?」

暁子「結婚して 家庭を持った訳ですから 独り住まいの時のようには ちょっと… ねえ フミちゃん。」

布美枝「ええ。」

暁子「ハハハハ!」

雄一「いやいや 家内も子供達も 慣れとりますから 今までどおり お気遣いは いりませんよ。」

暁子「え?!」

雄一「しかし 茂が やっと 所帯を持ってくれて 兄として 一安心ですわ。 貸本漫画なんぞ描いて 40間近で 嫁の来手もないようでは 人生 お先 真っ暗だと 母も そう しょっちゅう 嘆いておりまして。」

暁子「はあ。」

雄一「でも まあ これで どうにか 食っていければ いいんですけど。」

暁子「茂さん 漫画の方では 成功して いらっしゃるんですよね?」

雄一「成功?」

暁子「本を たくさん出して いらっしゃるそうで。」

雄一「まあ 幾らかは。」

暁子「どれくらいの収入に なるもんなんでしょう?」

布美枝「アキ姉ちゃん。」

暁子「漫画の仕事は 景気がいいように 伺っていますけども。」

雄一「景気ねえ。 週刊誌や何か 漫画雑誌が どんどん 出るもん 昔ながらの貸本漫画っていうのは どうも 旗色が悪いようですわ。 世間は 高度成長なんて 騒いでますけど 成長するものもあれば 逆に廃れるものもある。 どこもかしこも すべてが 好景気という訳には いかんもんですね。 ハハハ!」

玄関前

雄一「ほら 行くぞ。 あ~ 寒いな。」

居間

暁子「新婚家庭で お風呂 使っていくなんて どういうつもりかしら。 なあ 話が違うような気が するんだけど。」

回想

源兵衛「決めてええか? あれはええわ。 ええ相手だと思う。 これで決めえだ。」

回想終了

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