飯田酒店
源兵衛「そうか 元気にやっとったか。 うん 分かった。 だんだん!」
ミヤコ「暁子 どげん 言うとりました?」
邦子「フミちゃん 元気にしとられます?」
源兵衛「見送ったばかりで 何を ごちゃごちゃ 心配しとる! どうにかこうにか 所帯の切り盛りを始めてるようだ。」
ミヤコ「家 どげなとこですって?」
源兵衛「東京にしては のどかなとこらしいぞ。 田園風景 言っとったわ。」
邦子「あら すてきですね!」
源兵衛「都会風なとこより 布美枝も 気が楽だろう。」
ミヤコ「買い物なんか どげしとるんでしょう?」
源兵衛「そげな 女の暮らしの事まで いちいち 聞いとらんわ。」
ミヤコ「すんません。」
源兵衛「けどな。 ええ商店街があって 買い物は 不自由しとらんと そう言っとった。」
<暁子から届いた知らせに 飯田家の人々は ほっと 胸を なで下ろしたのでした>
水木家
(犬の鳴き声)
回想
暁子「ちゃんと 茂さんに聞いたの? 毎月 幾らでやりくりしていくのか 貯金は 幾らあるのか。」
回想終了
<それは 布美枝が 内心 不安に思い始めていた事でした>
こみち書房
布美枝「あれ? ここ 貸本屋さん?」
布美枝「こんにちは。 うわ~ これ 全部 漫画? 水木 水木…。 水木…。 あ! あった! 『妖奇伝』… あっ! 何 これ? こげに 恐ろしいもの。 あの人 こんなの描いておられるんだ。」
美智子「うちは 立ち読み禁止だよ!」
子供1「座ってるもん。」
2人「なあ~!」
美智子「へらず口 きいて! おばあちゃんたら また 居眠りして! 店番にも 何にもなりゃしない!」
田中キヨ「何 言ってんだい。 寝ちゃいないよ。」
美智子「ほら 早く入って!」
原田「奥さん 人使い荒いんだもんな!」
布美枝「あ~っ!」
原田「ああっ!」
美智子「あらっ? あなた この間の?」
<貸本屋に現れたのは 布美枝を助けてくれた恩人と 置き引きの男>
美智子「こら! 逃げるな!」
布美枝「あの… これは 一体?」
美智子「ここじゃ 何だから 奥入ってちょうだい。 ね 狭いとこだけど。 ほ~ら 早く運んで!」
原田「はい。」
美智子「どうぞ こっちよ! はい どうぞ!」
<これは 一体 どういう事でしょう?>