こみち書房
徳子「なんだか ぼんやりした子ね~。」
靖代「島根から出てきたって 旦那の転勤か何か?」
美智子「さあ どうだろ。 今度 来たら 聞いてみる。」
子供の客「おばちゃん こんにちは。」
美智子「いらっしゃい。」
靖代「やだ もう こんな時間だ。 銭湯 開けなきゃ。」
和枝「店に戻って 商売商売。」
徳子「美智子さん 『主婦の手帖』 戻ってきたら よけといて。 次 借りるから。」
美智子「うん 分かった。」
和枝「ごちそうさま。」
靖代「僕達 漫画ばっかり読んでないで 勉強もしなさいよ。」
徳子「そうよ。」
子供の客「これ お願いします。」
美智子「は~い。」
<昭和30年代半ば 本を買うのは まだ ぜいたくな事でした。 一日10円で 新刊が借りられる 貸本屋は 人気があって 全国で 3万軒もの店が あったそうです。 貸本屋は 大人も子供も やってくる 町の社交場でも ありました>
水木家
玄関
<さて その翌日…>
(猫の鳴き声)
布美枝「あらっ この間の猫。」
(猫の鳴き声)
布美枝「すっかり 怖がっとる。 おいで おいで おいで…。 あ~ 行ってしまった。」
浦木「うわ~っ 痛い! 痛い! うわ~っ。」
(悲鳴と猫の鳴き声)
布美枝「あっ イタチさん。 じゃなくて えっと…。」
浦木「浦木です。 …俺 猫嫌い。 あ~。」
<現れたのは イタチ。 いえ 上京する列車の中で出会った 茂の幼なじみの 浦木克夫でした>