連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第41話「消えた紙芝居」

仕事部屋

布美枝「借金の申し込み?!」

茂「し~っ! 聞こえる。」

布美枝「そんな。 懐かしくて 会いに来てごされたんじゃ なかったんですか?」

茂「妙だとは 思っとったんだ。 大して売れてもおらんのに 俺の 評判が耳に入るはずないけん。 どっかで たまたま 『鬼太郎』を見かけて 売れとると 勘違いしたのかもしれん。」

布美枝「でも 再起を図るって 言っとられたですよね?」

茂「金がなくては 人は集められんよ。」

布美枝「けど お金の事なんて ひと事も。」

茂「何か言いたそうには しとったんだ。 切り出しにくかったんだろうな。 少し都合つけてくれ。」

布美枝「えっ?」

茂「幾らかでも 包んで渡したい。」

布美枝「あ 今すぐは ちょっと あちこちの払いもありますし。 あ! 富田書房からの原稿料が 入ってからでは いけませんか? じき入りますよね。 1冊分でも 入れば 一息つけますけん。」

茂「金は 入らん。」

布美枝「え?」

茂「国交が断絶して 金は 凍結状態だ。」

布美枝「こげな時に 何 言っちょるんですか? それ どこの国の話ですか?」

茂「富田と うちだよ。」

布美枝「え? えっ?!」

茂「富田書房とは 絶縁してきた。」

布美枝「お金 もらわずに?」

茂「向こうのやり口が 腹に据えかねた。」

布美枝「けど…。」

茂「今更しかたない。 あの金は すっぱり諦めるぞ。 心配するな。 明日から 他の出版社に売り込みに回るけん。」

布美枝「そげな事なら 都合つけるも何も ないじゃないですか! 幾らか包むだなんて うちが 借りたいぐらいですよ。 国家予算は 赤字です!」

茂「分かっとる!」

布美枝「だったら…。」

茂「知らん振りは できん。 幾らか都合せい。 ええな。」

布美枝「そげなら これ。 狐に頼んで 小判に変えてもらって下さい!」

茂「むちゃ言うな!」

布美枝「そっちこそ むちゃばっかり。」

<嫁入りの時に持ってきたお金も 残りわずか。 家の月賦の支払い 生活費 お金は どんどん 出ていくばかりだったのです>

玄関

茂「売り込みに 行ってくる。 うまくしたら その場で 前借りできるかもしれん。」

布美枝「はい。」

茂「音松さんは?」

布美枝「上で 何かしとられます。」

茂「前借りに成功したら 幾らか包もう。 もしダメなら…。」

中森「お待たせしました!」

茂「これしかない。 行ってくる。」

中森「新作です。 行って参ります。」

(戸の閉まる音)

布美枝「あはっ…。」

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