美智子「ううん 気づいてない。」
太一「あれは… どうしたろ?」
美智子「え?」
太一「手紙…。」
美智子「持って帰ってもらった。 預かった方がいいか 迷ったんだけど…。」
太一「さっさと破って 捨ててくんねえかな。」
美智子「う~ん…。」
太一「最悪だ…!」
美智子「ね 食べよう。 お腹 空っぽだと 元気 出ないから。 ね。 こういう時は おいしい物 食べるのが一番。」
キヨ「そうだ そうだ。」
美智子「うん。 もう こんな事ね よくある事なんだから。 あ 盲腸を切るみたいもんよ。 まだまだ先は長いんだし これから いっぱい いい事あるんだから。 しっかり食べて 嫌な事 忘れよう。」
太一「適当な事 言わないでくれよ。」
美智子「え?」
太一「盲腸 切った事 忘れる奴 いないだろ。」
美智子「は…。」
太一「いい事なんか いつ あるんだよ…。」
美智子「太一君…。」
太一「簡単に言わないでくれよ! すいません。」
美智子「あっ。 あ~… ああ…。」
キヨ「かわいそうな事 したね。」
客「こんにちは~。 お願いしま~す!」
キヨ「はい 今 行くよ。」
美智子「いいわ おばあちゃん。 私 行くから。」
<今は どんな言葉を かけても 太一を より深く 傷つけてしまうだけでした>
水木家
居間
布美枝「うわっ! すごい!」
茂「どげだ? 前金で もらったぞ。」
布美枝「ご苦労さまでした。」
茂「今度の出版社は ええぞ。 見た目は ボロで貧乏そうだが 社長の深沢さんが 『鬼太郎』に ほれ込んでくれとる。」
布美枝「そげですか。」
茂「うん。 富田の どケチおやじとは違って 金離れも ええんだ。」
回想
茂「前金で お願いします。」
深沢「はあ?」
茂「アッハハ あの 実は その富田書房から ちっとも金が入らんもんで…。」
深沢「そりゃ お困りでしょう。 よし…。 あるかな? これで なんとか しのげますかな?」
茂「あ~っ! あっ あ はい!」
回想終了