連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第78話「初めての里帰り」

仏間

源兵衛「布美枝の奴… すっかり 母親らしく なっちょ~な。」

ミヤコ「ええ。」

源兵衛「この家が残れば… それで ええ事にするか!」

ミヤコ「はい。」

源兵衛「店は… 細々とでも続いておれば おばばも 許してくれるだろう。 子供やち いつの間にか みんな 自分で しっかり 歩いちょ~わ。 もう… 道をつけてやらんでも ええな。」

(鈴の音)

源兵衛「おばば… ここは 残ったもんで なんとか やっていきますわ。」

飯田坂店

源兵衛「山田さんから 『出雲錦の特級 3本 届けてくれ』と 注文が来とるぞ。」

貴司「分かった。 ここ済んだら 行ってくる。」

源兵衛「それからな…。」

貴司「ん?」

源兵衛「一遍… うちに連れてこい。 早い方がええ。」

貴司「…え?」

源兵衛「どげな娘か… 会ってみんと 分からんけんな。 話は それからだ。」

貴司「おやじ…。」

源兵衛「許した訳では な~ぞ。 まずは 本人と 親御さんに お会いしてからだ。」

貴司「うん…。」

源兵衛「まったく… 早こと言えばええものを…。」

貴司「すまん…。」

飯田家

2階

(ミシンの音)

いずみ「姉ちゃん?」

布美枝「ん?」

いずみ「何 縫っとんの?」

布美枝「藍子のスカート。 たんすの中に 私の古い服が 残っとったけんね。」

いずみ「お父さん 『会ってみる』って 言っとったよ。」

布美枝「え…?」

いずみ「『満智子さん 家に連れてこい』って お兄ちゃんに言っとった。」

布美枝「そう… うまくいくと ええね。」

いずみ「ね 『満智子さんの事は 絶対に譲れん』って お兄ちゃん お父さんに 言ったんだって?」

布美枝「うん。」

いずみ「見直したわ。 貴司兄ちゃんも いざとなると 強い時 あるね。」

布美枝「ほんと。」

いずみ「『そげなとこは フミ姉ちゃんと同じだ』って お父さん 言っとったよ。」

布美枝「私と?」

いずみ「うん。 ほら さっきの早業 お父さん 感心しとったわ。 藍子の のどに 指ぐっと入れて ビー玉 吐き出させて。」

布美枝「とっさの事だけん。」

いずみ「お医者さんも 褒めとったよ。 『対応が早かったけん 大事にならんだった』って。」

布美枝「…そういえば あんたが 藍子くらいの頃 肺炎にかかって 死にかけた事があったんだよ。」

いずみ「私が?」

布美枝「お医者さんにも 『覚悟した方がええ』て言われてね。 おばば ず~っと 仏壇の前で 手合わせて 拝んどった。」

いずみ「へ~え。」

布美枝「一遍 息が止まってね たんが のどに詰まって。 もう… ダメだと思った。 その時 お父さんが あんたの 口の中に 指突っ込んだの。 『こげに小さな子供を死なせて どげす~だ』って たんを かき出して。」

布美枝「あんた それで 息吹き返して 大きな声で 泣いたんだよ。 さっき とっさに 指入れたの お父さんの事が 頭に残っとったからかな。 東京に出ていくのも ええけど けんかして 飛び出すような 事だけは せんでね。 お父さん 専制君主だけど あんたの事 心配しとるのは ほんとだけん。」

いずみ「うん…。 私 車の免許 取ろうかな。」

布美枝「免許?」

いずみ「うん。 だって 貴司兄ちゃんが 婿に行ったら 私だって たまには 配達の 手伝いも せんといけんでしょう。」

布美枝「いずみ…。」

いずみ「昔のフミ姉ちゃんみたいに 自転車で配達するの カッコ悪くて 嫌だもん。」

布美枝「も~っ。」

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