連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第79話「旅立ちの青い空」

布美枝「どうぞ。 何もないですけど。」

浦木「ほんと 何もありませんな。」

茂「いきなり上がり込んで 人の家の飯に ケチつけんな!」

太一「すいません! この人が グイグイ引っ張るもんですから。」

政志「俺まで くっついてきちまって…。」

浦木「あ~ん 遠慮には及びませんよ。 ゲゲと俺は 尋常小学校以来の『竹馬の友』。 『肝胆相照らす仲』とでも言うか…。」

茂「くされ縁。 いや もう悪縁だな…。」

浦木「ハハッ。 いや しかし 今日は してやられたなあ。 本命に張れば 大穴が来るし 大穴に張れば本命が来る。」

布美枝「太一君も?」

太一「はい…。」

政志「にいちゃんには ビギナーズラックってのが あると思ったんだけどなあ。」

浦木「あんた 運がなさそうな顔してるよ。」

茂「自分だってオケラのくせに。」

浦木「俺は 今日は たまたま 厄日だっただけだ。 お前と違って 貧乏神に 取りつかれとる訳じゃねえ! 大体 いつまでたっても 貸本漫画に しがみついとるから こういう貧しい物しか 食えんのだぞ。」

布美枝「まあ ひどい…。」

浦木「もっと労働に見合った報酬を 得られる仕事を探せ。」

太一「失礼だな 浦木さんは。」

浦木「おい 青年。 大人の会話に 口を挟んでは いけん。 現実は 厳しいんだ。 時代は動いとる。 お前 モタモタしとると 最終バスにも 乗り遅れるぞ。」

茂「いらん お世話だ…。」

政志「しかたねえよなあ。 いろいろ諦めてんだろう 先生だって。」

茂「え?」

政志「しかたねえよ。 割りのいい仕事ったって 片腕じゃ 思うように いかねえもんなあ。 戦争に行きゃ ひでえ目に遭うし 戻ってきても ろくな事はねえ。 どこまで行ったって 損するように 出来てんのさ 俺たちゃ…。」

浦木「ズバッと言うね この人… ハハハハ!」

茂「しかたないか…。 そんなふうに思った事は ないですな。 好きで描いとるんですよ。 自分は 好きで 漫画を描いとるんです。 貧乏は たまりませんが 損しとるとは 思わんですなあ。」

政志「好きな事…。 へっ 人間 好きな事に 裏切られるって事だってあんだぜ。」

<政志の言葉に 布美枝は 何か ドキリとしました>

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