布美枝「ほら 藍子 お船が出来ましたよ。 大丈夫かなぁ こみち書房…。」
回想
美智子「うちの店も どうなる事か… 値上げして お客さんが来なくなった店も あるって聞くしねぇ。」
キヨ「八方ふさがりだ。」
回想終了
布美枝「今度は 何が出来るかなあ。」
藍子「ボートさん。」
布美枝「なんか 力になれんかなあ…。」
回想
キヨ「猫も しゃくしも テレビ テレビ。 お客さん取られて こっちは 商売 あがったりだよ。」
布美枝「そうそう 和枝さんのところ テレビ買ったんですね。」
美智子「そうなのよ。 オリンピック見るんだって 張り切ってるの!」
回想終了
布美枝「オリンピックか…。 あ… そうだ!」
田中家
美智子 キヨ「あら… メダル?」
布美枝「金 銀 銅があります!」
美智子「へえ~ よく出来てるわね。」
布美枝「厚紙と 折り紙と あと 有り合わせの はぎれで 作ってみたんですけど…。」
キヨ「ほんで これを どうするんだい? こちらで… 使って頂けないかと思って。」
美智子「えっ?」
布美枝「たくさん 本を借りた子供に メダルをあげるというのは どうでしょうか?」
美智子「本を借りたら メダル?」
布美枝「10冊で 銀 20冊で金とか ルールを決めて。 オリンピックブームに あやかって 子供同士が メダルの数を競い合うようになれば 本を借りる子が もっと増えると思うんです。 あ… ダメですよね! こんな おもちゃじゃ…。 すいません。 ちょっと 思いついたもので…。」
美智子「それ! やりましょう!」
キヨ「いい考えだよ! 子供はさ オマケとか 景品が好きだから 喜ぶんじゃないかね?」
美智子「そこの甲州街道を マラソンが走るでしょ。 もう みんな 自分達が オリンピックに参加するみたいな気に なってるのよ!」
キヨ「貸本オリンピックって事にしてさ メダルを たくさん集めた子の名前を 店に はり出すってのはどうだい?」
美智子「いいわね!」
布美枝「使ってもらえますか? このメダル。」
美智子「ええ 使わせてちょうだい! 数 作ってもらえる? あっ お金は 払うわ。 材料費と お礼と…。」
布美枝「ええんです! お礼なんて! 少しでも 役に立てたら それで。」
美智子「布美枝ちゃん…。」
布美枝「私が… 何も分からんまま 東京に出てきて なんとか やってこられたのは この お店があった お陰ですから。 私だけじゃありません。 太一君や きっと 他にも大勢… ここを支えにしとる人 おると思うんです。 お店がなくなったら みんなが困りますけん。」
美智子「ありがとう!」
布美枝「けど…。」
美智子「えっ?」
布美枝「メダルだけじゃ… もの足りんですね。」
キヨ「たくさん 集めたら 何かと あの… 交換できるっては どうだい?」
美智子「無料貸し出し券 作ろうか?」