田中家
キヨ「どういうつもりだい? あんたが しゃしゃり出たせいで 騒ぎになっちまったじゃないか。 子供のけが 大した事なかったから よかったようなものの…。 騒ぎに ならないようにね 美智子は ぐっと 我慢してたんだよ! それを 何だい! 知らんぷりしてないで 店の片づけ 手伝ったら どうなんだ!」
政志「痛えな 何すんだよ!」
キヨ「『商売の邪魔されて 腹が立った』なんて 言わせないからね。 え~?! あんたね 一度だって この店のために 働いた事は ないんだから! 全部 美智子じゃないか! 店の仕事も やりくりも… みんな美智子に押しつけて!」
美智子「おばあちゃん… もう。」
キヨ「お巡りさんまで来て…! もう これで うちの評判は がた落ちだ。 あんた この店 つぶす気かい?!」
布美枝「すいません… 私が 余計な事したから。 メダルなんか 作らなきゃよかったんです。 あの人達 怒らしてしまって…。」
美智子「何言ってるの。 布美枝ちゃん うちのために 一生懸命 やってくれたんじゃない。」
キヨ「そうだよ。 布美枝ちゃんが 責任 感じる事はない。 考えなきゃ いけないのは あんただよ 政志! こういう時に ビシッとしないでどうすんだ! 昔のあんたは こんなんじゃなかったよ…。 電気工してた頃の あんたは 働きもんで 頼りになった。 それが… 今じゃ まるで ふぬけだよ!」
政志「あ~ うるせえ うるせえ うるせえ!」
キヨ「そうやってね グダグダしてるくらいなら 千葉へでも何でも行って 電気工の 仕事 したらいいじゃないか!」
政志「電気工に戻るつもりねえから。」
美智子「お茶でも いれようか? お客さん もう来ないだろうし 店 閉めて…。」
キヨ「どうして ちゃんと 言わないんだ! 私に ばっかり言わせて…! 女房だろ。 たまには 『しっかりしろ』って ハッパかけたら どうなのさ!」
美智子「おばあちゃん…。」
キヨ「あんたがね いつまでも そうやって 遠慮してたら かえって 政志のために よくないんだよ。 どうして それが 分かんないのか?!」
客「すいません お願いします。」
キヨ「お客さんだよ。 お客さん!」
客「お願いしま~す!」
美智子「…は~い。」