連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第91話「来るべき時が来た」

水木家

(犬のほえる声)

居間

布美枝「豊川さんが編集長に?」

茂「ああ そげ言っとった。」

布美枝「あ~ お若いのに 大したもんですね。」

茂「30そこそこかなあ。 よほど やり手なんだろう。」

布美枝「へえ…。」

茂「あの男のもとで 編集方針を 一新するそうだ。 それで こっちにも お鉢が回ってきた訳だ。」

布美枝「お父ちゃんが 前に 言ってたとおり。 チャンスが もう一遍きましたね。」

茂「うん… あっ… あの男 誰かに似とると思ったら 猫か。」

布美枝「猫?」

茂「うん。 あの 寺の裏辺り ウロウロしとるだろ。 顔に ひっかき傷のある 負けん気の強そうな。」

布美枝「ああ よう けんかしとる あの猫。」

茂「うん。」

(猫の鳴き声)

布美枝「言われてみれば 似とる。」

茂「戌井さんとこの原稿 今夜 仕上げてしまうけん 明日 届けてくれ。」

布美枝「徹夜ですか?」

茂「5日後には また あの猫が うちに来るけん 早こと 『少年ランド』の構想に 取りかからんとな。」

布美枝「はい!」

戌井家

早苗「水木さんが 『少年ランド』に?!」

布美枝「『週刊誌ではなくて『別冊少年ランド』だ』って 言ってました。」

戌井「それが登竜門ですね。」

布美枝「登竜門?」

戌井「ええ。 まず 別冊で 1本描いてもらって 作品の出来栄えや 読者の反応を見るんです。 そこで 合格となったら いよいよ 『週刊少年ランド』の本誌に 進出ですね。」

布美枝「ほんなら これは 試験という事ですかね?」

戌井「ええ まっ そういう意味合いも あると思います。」

早苗「でも すごいじゃないの! 売れてるんでしょ 『少年ランド』って。」

戌井「あの 40万部は いってるかな。」

早苗「40万?! うちで作ってる本 初版2,000部よ? 200倍じゃないの!」

布美枝「200倍?!」

戌井「おいおい うちと比べて どうするんだよ? 向こうは 日本で 一二を争う 大出版社だぞ?」

早苗「うちは 日本一小さい 出版社ですけどね。」

戌井「しかし 面白くなってきたなあ。 大手出版社にも やっと 水木漫画の理解者が現れた訳だ。」

布美枝「はい。」

戌井「まあ 僕に言わせれば いささか 遅きに失うした感は ありますけどね。」

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