居間
藍子「あれ~?」
テレビ『ブーフーウー』
茂「こらこら 触ったらいけん。 真空管が爆発するぞ。」
布美枝「えっ そげん怖いもんですか?」
茂「うん そげ聞いた事がある。」
布美枝「けど 藍子が 触りたくなる気持ち 分かりますね。」
茂「ん?」
布美枝「大人でも 不思議ですけん。 こげな 小さな箱の中で 人や物が動くなんて。」
茂「ああ そげだな。」
布美枝「藍子の目には どげなふうに 映ってるんでしょうね? テレビの中に 小さな別の世界が あると思っとるのかな。」
茂「うん 小さい世界か…。 小さい世界ねえ…。 う~ん。」
<その日 茂は ず~っと テレビの前に座り込んでいました>
回想
豊川「テレビよりも面白い インパクトのある作品を 描いて頂きたい。」
茂「紙芝居も 貸本漫画も テレビに け散らされて 消えていったようなもんだ。」
回想終了
テレビ♬~『夢で逢いましょう』
テレビ「男『ハルちゃん食品の しょうゆラーメン! 味も量も大きくなって 新登場!』。」
茂「おう ラーメンか。 うまそうだなあ。 ああ 腹へったな~。」
テレビ「男『うれしい時は ハルちゃんラーメン』。」
茂「ん? あれ?」
テレビ「男『つるつるつるつる つ~るつる! 悔しい時も ハルちゃんラーメン。 つるつるつるつる つ~るつる うまい うまい ハルちゃんラーメン おいしすぎて ギョッとしちゃう! ギョギョ!』。」
茂「あ~っ!」
2階
布美枝「えっ 何?!」
居間
布美枝「お父ちゃん どげしたの?」
茂「そうか… これだ! 『テレビ小僧』… 『テレビマン』…。 違うな 何だ? 『テレビ人間』 違うな。 『テレビくん』… そうか! 『テレビくん』だ!」
布美枝「テレビが どげしたの?」
茂「腹へった。 夜食 頼むわ。」
布美枝「えっ?」