はな「最初は 小間使いだったけんど 翻訳もさしてもらった。」
吉平「英語の翻訳け。 ほりゃあ すげえじゃん!」
はな「ほれから 腹心の友ができた。」
吉平「腹心の友?」
はな「心から分かり合える親友の事。」
吉平「へえ! ほりゃあ どんな友でえ。」
はな「私より 8つ年上で 葉山蓮子さんっていうの。」
吉平「まさか… いつだか はなに ブドウ酒を飲ませた 生徒じゃねえずらな。」
はな「そう! その蓮子さん。」
吉平「はな。 ほんな不良と つきあっちゃいけんら!」
はな「おとう。 私も 最初は ほう思った。 ふんだけんど 人は 心を開いて 話してみんと分からんだよ。」
吉平「はな 大人になったじゃんけ。 おとうの知らんうちに はなは うんとこさ成長しとる。 歯ぁ食いしばって 頑張ってきたからずら。」
はな「おとう…。」
吉平「おとう しばらく会いに来れんけんど。」
はな「どうして? また来てくりょう。」
吉平「今度ぁ ちょこっと長え旅になるだ。 はな こぴっと頑張るだよ。 さあ もう遅え。 行けし。 ふんじゃあな。 達者でな…。」
葉山邸
葉山「こんな いい縁談は 金輪際ないぞ!」
園子「多くの慈善事業を なさってらして 新しく出来る女学校の経営にも 関わる ご予定だとか。」
蓮子「女学校?」
葉山「何しろ 巨万の富を築いた名士だからな。」
園子「蓮子さん。 お返事は 早い方がいいと思うんですのよ。」
葉山「ちょっと 2人にしてくれ。」
葉山「蓮子 どうだろう?」
蓮子「お兄様は 本当に 私が あの方と夫婦になれると お思いになるんですか?」
葉山「頼む。 先方には お前を必ず説得する という約束で もう 結納金も 受け取ってしまった。」
修和女学校
廊下
はな「蓮様 お帰りなさい!」
蓮子「ただいま はなちゃん。」
蓮子の部屋
はな「固くなってしまったかしら?」
蓮子「ううん。 おいしい。」
はな「お兄様の所へ行ったって聞いて 心配したわ。 また何か ひどい事でも 言われたんじゃ…。」
蓮子「大丈夫よ。」
はな「よかった。」
蓮子「ねえ。 私 甲府の はなちゃんのおうちに 行ってみたい。」
はな「えっ…。」
蓮子「ご家族にもお会いしたいの。 お願い。 ねっ?」
はな「あ… でも うち ぼろ家だから びっくりすると思うわ。」
蓮子「構わないわ。」
はな「じゃあ お正月に。」
蓮子「ううん すぐ。 今度の週末は?」
はな「えっ!?」
安東家
居間
「安東ふじさんに電報ずら。」
ふじ「電報? フフフ ご苦労さんでごいす。」
リン「どっからでえ?」
ふじ「はなから。 フフフフ! 『ド エ ウ ト モ ト カ ヘ ル』。 ん? 『土曜 友と帰る』。」