廊下
はな「あのハトに乗っかって 甲府の空まで飛んでいけたらな…。」
<ここでは 空想の翼を広げる事もできず はなは 羽の折れた鳥のようでした。>
はな「はい…。」
労民新聞
<そのころ 行商で東京に来ていた おとうは またもや とんでもない事を 考えていました。>
回想
浅野「資本家は ますます富み その一方 我々 労働者は 過酷な労働を強いられ 一向に生活は 改善しない!」
一同「そうだ そうだ!」
回想終了
吉平「あの~。」
「失礼。」
「何か?」
吉平「私は キリスト教を信仰していて 神の下では 金持ちも貧乏人も 皆 平等だという考え方に 共鳴しております。」
「それが?」
吉平「あの講演会で それを実現しようと 孤軍奮闘している 浅野先生のお姿 大勢の労働者の 熱気に感動しました。 私にできる事は 何でもしますから 協力させて下さい!」
「でしたら これを。」
吉平「寄付… ですか? 私は 甲府から生糸を売りに来た しがない行商です。 寄付する金なんて ありません。」
「そうですか。 でしたら 結構ですよ。」
(戸にぶつかる音)
浅野「行商って言ってたな。 面白そうだ。 宿を突き止めてくれ。」
「はい。」
修和女学校
寄宿舎
醍醐「白鳥様は まだ ご縁談は ないんですか?」
白鳥「それは 降るようにございますよ。 ただ 私のお眼鏡にかなう男性が なかなか いらっしゃらなくて。」
一条「修和女学校の生徒は 外交官や貿易会社の殿方から 引く手あまたなのよ。」
醍醐「そうなんですか!」
(ノック)
スコット『皆さん、おやすみなさい』
一同『おやすみなさい スコット先生』
醍醐「はなさん。 私 我慢して ここで頑張る事にしたわ。 お母様のお手紙にも 書いてあったの。 ここの生徒でいれば 山ほど いい縁談が来るんですって。」
はな「縁談?」
白鳥「小さい人たち! 早くお休みなさい。」
はな「あっ ちょっと ご不浄へ。」
白鳥「消灯前に行くのを 忘れたのですか? しかたがないですね。」
ガス灯の下
はな「うちに帰りてえなあ…。 おとう… ごめん。 おら おとうの期待には応えられんさ!」