回想終了
糸子「ほんまあ? はあ~ あの子 アホやさかいなあ。 何でも連れて来よんやな。『よう見て連れてき』て 言うとかな あかんな。」
昌子「今更!」
回想
「『僕の話とかけまして 結婚式の娘を見守る父』と解きます。」
一同「その心は?」
「『どちらもオチつかないでしょう』。」
<この子は 何やろ? ま ええか。 おもろいし>
回想終了
小原家
玄関前
(せみの鳴き声)
<は~ せやけど うちの引き際は どないなったんや 聡子が あの調子やったら まだまだ先やで こら>
(ため息)
オハラ洋装店
糸子「あれ? いらっしゃい!」
八重子「お帰んなさい。」
糸子「来てたん。」
八重子「うん。」
糸子「どないしたん?」
井戸
八重子「あんな 糸ちゃん。」
糸子「うん。」
八重子「このごろ うちのお母さんが 急に 痩せてきたよってな。」
糸子「うん。」
八重子「いっぺん 病院で診てもうた方が ええちゅうて こないだ 検査してもうたんや。」
糸子「ふん。」
八重子「ほしたら あと半年やて。」
糸子「え?」
八重子「あと半年。」
糸子「ほうか。」
(せみの鳴き声)
小原家
台所
千代「これも 持って行き。 南京。 軟らこう 炊けたよってな。」
<おばちゃんが入院した病院は うちから自転車で 10分のとこやよって>
勝手口
糸子「行ってきます~!」
<2日に いっぺんは うちのおかずを詰めて 夕御飯どきに 見舞いに行くようになりました>
病院
糸子「こんばんは!」
玉枝「はれ 糸ちゃん! また来てくれたんけ。」
糸子「せや! もう うち このごろ ここに来るんが 唯一の気晴らしやよってな。」
玉枝「あ? 何ぞ また あったんけ?」
糸子「せや もう おばちゃん聞いてや! こないだ言うちゃあったな 問屋の アホのおっさんがな。」
玉枝「どないしたん?」
糸子「あいつが ほんまに…。 はれ? きれえな!」