高山「どうか 前向きに ご検討頂けないでしょうか?」
糸子「う~ん…。 やっぱし… あれやな。 うなぎ とろか? 里香! あんな うなぎ とっちゃって。 特上 4人前。」
譲「特上!」
里香「は~い。」
糸子「まあ… 話は よう分かった。 しっかりした ええ考えやと思う。 筋も よう通ってる。 あんたら うちが思てたほど アホちゃう ちゅう事も よう分かった。 けど…。」
2人「はい。」
糸子「これは もう 申し訳ないけど こっちの話でな うちは やっぱし オーダーメード職人なんや。 うちが 洋裁屋の看板 上げたんが 50年前や。 そのうち10年は 戦争で 自由に 洋服を作らせてもらえへんかった。 やっと 戦争 終わったら 今度は 世の中に 既製服が どんどん出回りだして オーダーメードは そっからずっと 斜陽産業ちゅうやっちゃ。」
糸子「いつ やめるか やめて 既製服に転向するか。 そら 何回も話は あったし そのたんびに 考えさせられた。 けど まあ ある時 決めたんや。 うちは 一生 オーダーメードだけで やっていくちゅう。」
譲「何でですか?」
糸子「うん?」
譲「何で そない決めたんですか?」
糸子「意地やな。」
譲「意地?」
糸子「最後の一人になったかて うちは オーダーメード職人として 意地 見せ続けちゃるって ま そない思ったんや。」
高山「え~?」
糸子「何や?」
高山「見せなくて いいんじゃないですか 意地なんか。」
糸子「ああ?!」
譲「そうですよ。 そんなん 先生 見せてるつもりでも 誰も 見てませんて。 なあ?」
高山「見てませんね 全く。」
栄之助「ほんなもん ちゃっちゃと捨ててしもて 僕らと 新しいブランド こさえましょ。」
糸子「お… お前ら…。 うちの この50年の意地 分かれへんけ?!」
2人「分かりません。」
高山「分かりません。 全く。」
糸子「里香! さっきのうなぎ キャンセルや!」
里香「は?」
糸子「こいつらに うなぎなんぞ 食わさんでええ!」
譲「いやいやいや 頂きますよ。」
栄之助「せっかくですからね。」
糸子「あかん! お前らみたいなアホに 食わす うなぎなんぞ ない!」