居間
<みんな うすうす 気付いているようでした>
道中
ハル「ちょっと待ち!」
糸子「ん?」
ハル「これ 持っていき!」
糸子「何これ?」
ハル「お握りや。 おなかすいた時 食べ。」
糸子「うん。 おおきに。」
千代「糸子!」
糸子「何?」
千代「これ 持っていき! 金平糖。 誰かに怒られたらな 見つからんように 隅っこ行って こそっと食べ。」
糸子「おおきに。」
千代「うん。」
糸子「行ってきます。」
千代「うん。 行っちょいで!」
枡谷パッチ店
仕事場
<金平糖は すぐに無くなりました>
田中「おい 小原! まだ泣いてんか? はよ手伝わんかい!」
糸子「泣いてません すぐ行きます。」
<実際 うちは 朝から晩まで 怒られっぱなしで。 近づいたと思たミシンは どんどん 遠なっていくばっかしで うちなんか もう一生 触らへんのちゃうか ちゅう気がしました>
糸子「あっ!」
田中「小原!」
糸子「あ…。」
<磨くんが こんな 大変やっちゅうんも知らんと うちは ベッタリ 張り付いちゃったなあ 女学校のみんな 元気やろか。 ああ 奈津でええから 会いたいなあ>
玄関
糸子「奈津! あんた 何してんの?」
奈津「別に。」
糸子「学校は?」
奈津「今日は 昼までや。」
糸子「何しに来たん?」
奈津「ん? まあ 何もないけどな。」
作業場
奈津「こう? こうかな?」
田中「そうそう そそ。」
奈津「いや~!」
枡谷「なかなか筋ええがな。 最初は みんな こんな うまい事いかへんもんやで。」
奈津「すごいなあ ミシンて。 こんな はよ縫えんやな。」
田中「おい 小原 茶 まだか?」
糸子「へえ ただいま。」
岡村「名前 何ちゅうん?」
奈津「吉田奈津 いいます。」
田中「奈津 ええ名前やなあ。 この辺に住んでんけ?」
奈津「吉田屋ちゅう料亭です。」
岡村「おう ええとこやんか!」
田中「ちゅう事は 将来の女将さんけ?」
奈津「そないなります。」
田中「へえ~!」
夜
山口「おい もう帰ってええで。」
糸子「は?」
山口「あとは わしがやっとくさかい。」
糸子「へえ。 あ お湯のみ 洗うてへんな。」
山口「ええて!」
糸子「え?」
山口「あとは わしが洗うとくさかい。 はよ帰れ もう。」
糸子「へえ ほな。」
山口「はい。」