心斎橋百貨店
入口
「いらっしゃいませ!」
<お父ちゃんが ミシンを買うたんには 制服をあんじょう 納めさえすれば うちが 百貨店に ごっつい見込まれて 洋裁の仕事も どんどん 回してもらえるんとちゃうか ちゅう計算が あったそうです。 けど 百貨店からは あれ以来 な~んも声も かかりません>
小原家
小原呉服店
<さて ここは 小原呉服店。 せやのに 反物の棚は 空っぽ。 代わりに ミシンが置いちゃって 小物が ちょろっと売ってます>
糸子「何屋やねん これは…。」
<とうとう 小原呉服店は 何の店かさえ よう分からんようになってまいました。 一個だけ言えんのは 何屋か分からんような店には お客は 来んちゅう事です。 このままやと 絶対 潰れてまうっちゅう事です>
静子「糸子姉ちゃん。」
糸子「ん?」
静子「今 ちょっと 話ええ? ちょっと。」
糸子「うん。」
<あ… そやけど ええ事もあります>
井戸
<あと 2か月で 静子が女学校を卒業します。 成績優秀な静子は ちゃんと 就職も決まったよって 賃金が入ってきます>
糸子「そういえば あんた いつから 働きにいくんや?」
静子「え?」
糸子「会社や。 4月からか?」
静子「その事なんやけどな。」
糸子「何や?」
静子「やっぱし 就職せんとこか思て。」
糸子「就職せえへんて? 何でや?」
静子「うちな 姉ちゃんの手伝いしたい。」
糸子「手伝い?」
静子「うん。 こないだも 百貨店の制服 みんなで 作ったん 楽しかったしな。 よそで ほかの人 手伝うより 姉ちゃんの手伝いしたいなあて。」
糸子「アホか! アホ!」
静子「え?」
糸子「あんた 何も分かってへんな はあ~! ああ~!」
静子「何で? 何で怒るん?」
<失敗や… 大失敗です。 妹らには 気苦労させたのうて お金の話は 一切してけえへんかった。 そら うちも アホやったけど この子も どんだけ のんきやねん>
糸子「うちは 苦しいんや! もう 呉服屋でものうなったし まだ 洋裁屋にもなられへん! このままやったら 家族全員 飢え死にや! せっぱ詰まってんねん!」
静子「ごめんなさい!」
糸子「四の五の言わんと 会社 働きにいき! それか どないしても うちの手伝いがしたい ちゅうんやったら 自分で外回って 洋裁の仕事 取ってき!」
静子「仕事?」
糸子「そうや。 姉ちゃんに仕事入って 初めて あんたも 手伝いができるんや!」
静子「はい。」
糸子「どこ行くねん?」
静子「仕事 取ってきます。」
糸子「はあ? ちょっと 待て! 静子!」
<まあ ええわ。 商売が どんだけ厳しいもんか あの子も 勉強せなならんのです>
<その小一時間後 なんと 静子が 仕事を取ってきました>