安岡家
玄関前
勘助「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」
居間
八重子「そうけえ…。」
糸子「うん…。」
八重子「けど うちも そんなんやったやで。」
糸子「えっ?」
八重子「うちも 美容師に なりたかったさかい まだまだ 嫁には行きたないやら そんな事ば~っかり 言うちゃあったら 親が 勝手に 結婚 決めてきてしもたんや。」
糸子「泰蔵にいちゃんと?」
八重子「そう。『ここは ほら 家が髪結い屋やし 嫁が美容師やりたがったところで 旦那も文句も言えへんはずや。 こんな ええ話はない』ちゅうて どんどん 話が進められて 気が付いたら 祝言の日ぃまで 決まっちゃあって。」
糸子「はあ~ そやったん!」
八重子「そやから 祝言の日ぃに 初めて 泰蔵さんの顔 見たんやで うち。」
糸子「へえ~。」
八重子「けど 今 思たら 親の言うとおりやっと。 おかげさんで 毎日 好きな仕事も さしてもろてるし 泰蔵さんにも 文句 いっぺんも 言われた事ないしなあ。 確かに こんな ええ話は なかったわ。 無理やりにでも 結婚さしてもろて ほんまに ありがたかったと思てる。」
<八重子さんから そんな話 されてしもて…>
小原家
玄関
千代「あっ 糸子!」
<何か また 早合点したらしい お母ちゃんから…>
千代「こないだの あの人やろ? 間違いないわ あの人やったら。 おめでとう! お母ちゃん うれしいわあ!」
<ほんまに うれしそうに そう言われてしもたら…>
糸子「うん… おおきに…。」
千代「ほんまに よかったあ!」
<それから あっちゅう間に 祝言の日取りが決まって…>
座敷
善作「♬『高砂』(せきばらい)た… たた…。」
<お父ちゃんは 早速『高砂』の練習を始めました>
松坂家
廊下
貞子「おばあちゃんはな 一番上等なやつ あんたに着せたりたいねん。 そやけどな おじいちゃんらがな…『相手の家との 釣り合いがあるから 中くらいのんに しとけ』って 言うんや!」
糸子『おばあちゃん。 うちも 花嫁衣裳なんか 安いやつで かめへんて。 一日だけの事なんやし。』
貞子「何や? あんたまで そんな事 言うんか?! おばあちゃんの事 邪魔にするんかいな?!」
糸子「いやいや 邪魔になんか してへんけどな。 う~ん… そんな上等なんは うちには合わへんし…。」
貞子「合わん事ない! 大事な 大事な 孫娘に しゃっちい花嫁衣裳 着せなあかんのやったら 私は 今日まで 何のために生きてきたんや?!」
木之元電キ店
糸子「大げさやて…。」
木之元「前のやつ 善ちゃん 持っていてまいよったやろ? これ これ! 新しいの バ~ン! 買うときよ!」
糸子「いや… 今 そんなお金 ないよって。」
木之元「ほんなもん 旦那に ねだったら ええんやし。 かわいい嫁さんに『なあ 電気扇 買うてよ』ちゅうて ねだられたら 断る男なんぞ いてるかいや!『おう! 買うちゃるやないけ! 何ぼじゃ?!』『まあ おとうちゃん』。」
<人が結婚するちゅうだけで 何や 周りが 急に おかしなってます>
木之元「わあ~!」