小原家
小原洋裁店
美代「あれ! お帰り!」
糸子「ただいま。」
美代「フフフッ 聞いたで! 祝言の日 決まったんやてえ。」
糸子「うん…。」
「花嫁衣裳 どんなん すんのん?」
美代「なあ!」
「ほれ!」
糸子「まだ 決めてへん。」
美代「あ~!」
ハル「神戸のおばあちゃんが 買うてくれんやで。 うちと違て 金持ちやさかいなあ さぞかし 豪勢なこっちゃで!」
美代「へえ~!」
「楽しみやなあ~。」
ハル「うん!」
<何や! みんなして 急に ニヤニヤ ニヤニヤ ニヤニヤ!>
「糸ちゃん おめでとう!」
「おめでとう!」
(ため息)
糸子「イタッ!」
ハル「『おおきに』言わんけ! 何 ブスッとしてんよ。」
糸子「ほっといてくれたら ええのに。」
ハル「はあ?」
糸子「結婚 決まったちゅうだけで えらい さらしもんじょ。」
ハル「さらしもん?」
糸子「みんな うちの顔 見ちゃ ニタニタ ニタニタ!」
ハル「みんな 喜んでくれてんやし! ありがとう 思わんけ! ほんまに 親父に似て ひがみ根性 強いんやさかい…。」
糸子「ひがんでへんわ! 気色悪いだけや!」
(ため息)
糸子「何じゃ こら! うちは 見せもん ちゃうど!」
(足音)
<祝言が近づくにつれて 事は ひどなる一方で…>
玄関前
「糸ちゃん どうや? お支度 でけたけ?」
糸子「おかげさんで。」
「そうけえ!」
「糸ちゃん 花嫁衣裳 見せてな!」
「見せてな!」
「見せてな!」
糸子「ああ 分かった。」
<そんなこんなに 大概 嫌気が さしちゃあったせいか…>
糸子「あの~… 何か 御用ですか?」
「あっ! あんた この店の人け?」
糸子「はあ…。」
「あんな 頼みたい仕事が あんやしょ! ちょっと その むちゃな話なんやけどな そやけど 受けてもうたら ほんまに助かんよ! もうあと あんたんとこしか ないんやし。 このとおりよ! このとおり!」
<久しぶりに 人の必死な顔っちゅうもんを 見た気ぃがしました>