連続テレビ小説「カーネーション」第60回「秘密」【第10週】

<2軒の家に 散らばってるより 1軒に おった方が 何かと節約なるちゅうて お父ちゃんらは うちで 寝起きするようになりました。 まあ その方が 子守かて してもらえるよって うちにとっても 都合がええ>

善作「これはなあ 危ないさかいな 優ちゃん 絶対 触ったら あかんで。」

優子「は~い! 優ちゃん 触らへん。」

善作「よっしゃ!」

オハラ洋装店

木之元「よう! 糸ちゃん。」

糸子「ああ いらっしゃい。 お父ちゃん。 木之元のおっちゃん。」

木之元「いや まあ… 糸ちゃんに 言いに来たんやけどな。」

糸子「えっ?」

善作「どないしたんや?」

木之元「昨日な…。」

善作「うん。」

木之元「勝君 大陸へ渡ったて。」

<『どうせ 浮気しちゃあた旦那や』ちゅう気持ちと『そやけど うちが 何ぼ 家族 ほったらかして 仕事したかて 文句の一つも言わへんかった。 あんな優しい人は いてへんで』ちゅう気持ちと『いや ほんなもん 自分が遊ぶんに 都合よかっただけや。 けど そこまで 腹黒い人やないはずや』。 一日中 ほんなんが 頭ん中で グルグル グルグル…。 出征してしもて 悲しさやら 心配やら ない事はないけど 他で グルグルし過ぎて そこまで 気ぃが いけへんちゅうんは ええんか 悪いんか…>

澤田「ごめんください!」

糸子「はい。 どうも…。」

澤田「小原さん。 この度は ご主人の出征 誠に おめでとうございます!」

3人「おめでとうございます!」

糸子「どうも おおきに。」

「で あの ご主人なんですけど。」

糸子「はい。 2階で 紳士服のご商売 してましたね?」

「ご自分のミシンで 縫製もしてたと 聞きました。」

糸子「はあ そうですけど。」

「という事は そのミシン 今は 使われてない ゆう事ですね?」

糸子「あ… いや 使てます。 あれは 要るんです。 供出できません。」

澤田「小原さん 今は お国の非常時です。」

糸子「それは 分かってます。」

「そら ミシンかて 2台あったら 便利かもしれません。 けど 1台でも どうにか なるはずです。 もともとは ご主人だけが 使うてたもんでしょう?」

糸子「そうですけど 戦争から 帰ってきた時に あれが なかったら 主人は 仕事が でけへんようになります! 勝手に供出する事はできません!」

澤田「はあ?『帰ってきた時』? 小原さん。 お宅 まだ そんな低い意識で この聖戦に臨んでるんですか?!」

糸子「はあ?」

澤田「いやしくも 日本の妻 夫を 戦地に送り出したら 潔く 遺骨になって帰ってくるのを 願うべきやないんですか?! 死んで お国の役に立ってこそ 旦那さんの値打ち ちゅうもんです!」

糸子「何? 何 この…?!」

澤田「何ですの? ちょっと!」

善作「まあまあ… あとで よう言うて 聞かせますよって 今日のところは…。」

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