あらすじ
ようやく回復してきた善作(小林薫)が無理をしないかと、糸子(尾野真千子)は不安でしかたがない。そこへ善作の友人の木岡(上杉祥三)が石川県の温泉旅行を持ちかける。糸子や千代(麻生祐未)は心配するが、善作は旅行を楽しみにしており、しかたなく糸子は国民服を新調し、酒を持たせて送り出す。その夜、善作が書いたらしい「店主・小原糸子」の字を帳簿に見つけ、もの思いにふける糸子のもとに、善作危篤の電報が届く。
66回ネタバレ
小原家
座敷
優子「お~じいちゃん。」
善作「お~お 優ちゃん。 今日から 小学校け?」
優子「うん。」
善作「どれ もっと おじいちゃんに 見してえな。」
善作「ほう~ このごろの小学生は そんな格好で 学校 行くんけ?」
優子「そうや。 お母ちゃんが こさえてくれてんで。」
善作「へえ~。 せやけど 何や ブカブカやな。」
優子「お母ちゃんが『こんで ええ』って言うた。『すぐ大きなるさかい』って」
居間
善作「何で もっと ピッタリに こさえちゃらへんねん?」
糸子「すぐ 大きなるさかい。」
善作「大きなったら また 大きいのん こさえちゃったら ええやないかい。」
糸子「うち 忙しいし。」
善作「アホ! 何のために 母親が 洋裁屋 してんや。 子供の制服ぐらい お前 吉ッと縫うちゃらんかい!」
糸子「せや。 な 優子の髪 切ってもええ?」
善作「ああ?」
糸子「いちいち 毎朝 おさげに結わんならんの めんどくさいよって 直子みたいに ピシ~ッと おかっぱにしたら ええねん。」
善作「あかん。」
糸子「何でやねんな! 子供は おかっぱが ええやんか。 一番かいらしいやんか。」
善作「やかましい! あかんちゅうたら あかんのじゃ! 勝手に切ってみ… 承知せんど。 なあ~ 優子ちゃん。」
台所
糸子「ちょっと元気になったからって 朝から ガミガミ ガミガミ…。 ほんま ヨレヨレ 寝とってくれるぐらいが おとなしいて ちょうど よかったわわ!」
玄関
善作「優ちゃ~ん 行っちょいで~!」
<まあ ほんな罰当たりな事 言えるんも ここに来て やっと お父ちゃんの具合が ようなってきたからやけど。 途端に また張り切って 動こうとしたがるよって 危なっかしいて かないません>
2階 座敷
善作「温泉?」
木岡「石川県のヤマギワ温泉ちゅうとこや。 こないだ 靖が行ってきよってな えらい ええとこやったらしいで。『善作さんかて のんびり 湯につかって うまいもんでも 食うたら ええ療養に なるんちゃうか』ちゅうて 言うちゃったわ。」
善作「そら ええがな。 行こや!」
木岡「へっ?!」
善作「季節もええし ちょうどええで。」
木岡「いや ほやけど 石川県やさかい ちょっと遠いで。 まだ そんな 体 無理 きかんやろ?」
善作「いんや! 家で じ~っとしてたらな 気がめいって 具合悪い。 温泉が 疥癬に効くんやったら 一石二鳥や。 行こや。」
木岡「ほうか? よっしゃ! ほな 木之元も奥中も 誘おか?」
善作「おう 誘え 誘え! 楽しみやな!」