優子「何で?!」
糸子「お母ちゃん 忙しいんや。」
優子「嫌や! 優ちゃん 映画 行きたい。」
糸子「あかん。」
優子「なあ お母ちゃん うち 映画 行きたい! なあ お母ちゃん!」
糸子「あんた ほな その事 ちゃんと 工場に確認して…。」
優子「なあ お母ちゃん!」
糸子「うるさい! 工場に連絡して ちゃんと確かめときや。」
静子「うん 分かった。」
優子「なあ お母ちゃん。 なあ お母ちゃん うち 映画 行きたい。」
直子「直ちゃんも 映画 行きたい。」
優子「なあ 連れてってよお!」
直子「直ちゃんも 映画 行きたい!」
糸子「うるさい!」
<まあ ほんでも 連れてっちゃる事にしました>
玄関前
3人♬『野道を行けば』
「こんにちは。」
糸子「こんにちは。」
「こんにちは。」
「どこ 行くん?」
糸子「ちょっと そこの集会場。 今日な 映画 やるんやて。」
「へえ~ 行ってらっしゃい。」
糸子「行ってきます~。」
♬『唄をうたえば 靴が鳴る』
集会場
(ざわめき)
糸子「面白いやろか?」
優子「面白いに決まってる! 絶対 絶対 面白いに決まってる!」
糸子「せやろか?」
優子「あ!」
直子「あ!」
糸子「始まった。」
(拍手)
(機関銃の音)
<おもろない…。 兵隊が戦うて ばっかしや>
直子「なあ お母ちゃん 外 行きたい。」
糸子「あ そうか。 ほな お外 出とくか?」
直子「うん。」
糸子「優子。 お母ちゃんら お外 いてるよってな。 すんません。」
2人「いよ~! お~!」
糸子「いでっ… むむむ…。 どないしたん?」
優子「優ちゃんも もう ええ。」
糸子「面白ないか?」
優子「うん。」
糸子「ほな 帰ろか。」
優子「うん 帰ろ 帰ろ。」
小原家
玄関前
優子「優ちゃん もっと楽しいのんが 見たい。」
糸子「う~ん。」
優子「楽しいのんとか きれえな映画が見たい。」
直子「きれえな映画て どんなん?」
優子「きれえな お姫様が きれえなドレス 着て 出てくるんや。」
糸子「せや。 きれえな お城に きれえな花が咲いてやな…。」
優子「うん! フフフ!」
糸子「直子 よう考えたら あんたなんか 生まれて このかた ず~っと戦争やさかい きれえなもんやら 何も見た事ないんやな。」