橘家
台所
安子「わあ 卵焼きじゃ! ありがとう お母さん!」
御菓子司たちばな
安子「お弁当の隅っこに おはぎゅう詰めたらいけんかなあ。」
小しず「いけんに決まっとろう。」
ひさ「しゃあけど 大福じゃったら 白えごはんの中に入れたら 分からんかもしれんな。」
小しず「お義母さん!」
ひさ「うそじゃ うそじゃ。 安子 お菓子ゃあ帰ってきてからじゃ。」
安子「は~い 行ってきま~す。」
2人「行ってらっしゃい。」
玄関前
「おはよう。」
安子「おはようございます。」
水田とうふ
安子「おはようございます。」
卯平「お~ 安子ちゃん おはよう。」
花子「おはよう。 きぬ! 安子ちゃん 来たよ。」
きぬ「は~い! 安子ちゃん おはよう。」
安子「おはよう きぬちゃん。」
2人「行ってきま~す。」
卯平「はい 行ってらっしゃい。」
「おはようさん。」
2人「おはようございます。」
小学校
勇「ピッチャー 第1球 投げました! カッキ~ン! 打ちました!」
(歓声)
勇「早稲田 4番 村井選手 大きな当たり!」
「さすが 勇ちゃん!」
安子「また勇ちゃんじゃ。 やかましいなあ…。」
きぬ「ほっとかれえ。 子供なんじゃ。」
勇「おい あんこ。」
安子「あんこじゃねえわ 安子じゃ。」
勇「お前の家 ラジオあるんか。」
安子「ラジオ?」
勇「ねえんか。 やっぱりのお。 貧乏商店街じゃもんなあ! 早稲田と慶応の野球中継 聴きてえんなら うちで聴かせたってもええで。」
安子「いらんわ!」
きぬ「本当に 子供じゃあなあ…。」
橘家
居間
<ラジオは まだまだ 庶民にとって 高嶺の花でした>
丹原「(せきばらい) あの~ 大将。」
杵太郎「何なら?」
丹原「ラジオを買う ご予定なんかは ねえんかなあ思いまして…。」
杵太郎「ラジオ?」
金太「おお ええなあ ラジオ。 うん。」
杵太郎「あほうなこと言うな。 そねえなもん買うたら 仕事に身が入らんわ。」