安子「さあ… 知りません。」
ロバート「木漏れ日の英語は ありません。」
安子「えっ?」
ロバート「この きらきらとした 光と影のダンスや 揺れる木の葉の形 そこから感じる温かみ… こういったものを ひと言で表す言葉は 日本語にしかないものです。」
安子「そうじゃったんですか…。」
ロバート「この『木漏れ日』という言葉に 出会えたことは 日本語を勉強していて よかったと思う 一つのことです。」
安子「何か… 不思議な気持ちです。 日本人でも知らん 日本のええところを アメリカ人のローズウッドさんを通して 知るじゃなんて 不思議じゃけど うれしいもんですね。」
ロバート「Oh…。 Right. I got it!(そうだよし!)Mrs.Kijima, would you do me a favor?(雉真さんに お願いがあるのですが」
安子「Yes…。」
ロバート「Would you help me make some teaching materials?(教材づくりを手伝ってもらえませんか)」
安子「教材づくり? 何のですか?」
ロバート「実は 英語の教室を開いてほしいという 要望があるんです。」
安子「ああ…。」
ロバート「ここの宮司さんの計らいで 週に一度 社務所を 使わせてもらうことになりました。」
安子「えっ ここで英語の教室を?」
ロバート「はい。 春に始められたらと 準備をしてるところです。」
安子「そうじゃったんですか。」
ロバート「ただ… テキストも何もかも 自分で作らなくてはならなくて。 それが とっても難しくて 今 悩んでいました。 でも 分かりました。 日本人が気付いてない 日本のいいところ。 それを自然と英語で話し合えるような そんなテキストにしていけばいいと。 あなたに手伝ってもらえると とっても心強いのですが。」
安子「『カムカム英語』が終ったんです。 何か… 心の支よを失うたようで… どねんしょう思よったんですけど…。 こねんして 英語の道は続いていくんですね。」
ロバート「では…。」
安子「お役に立てるか分かりませんけど 私でよかったら お手伝いします。」
ロバート「Yes! Come on, Kijima, you too!(ほら 雉真さん あなたも!) ハハハハハハハッ。」
安子「フフフッ。」
雉真家
庭
回想
千吉「勇。 そろそろ嫁ょうもらえ。 安子さんと一緒んなれ。」
回想終了
ダイニング
雪衣「お待たせして すみませんでした。」
算太「お~ ほっほっほっ ありがとう ありがとう! うん? いや~ どこを虫が食うとったか 全く分からんなあ。 ヘヘッ いや~ 大したもんじゃ。 ありがとう ありがとう!」
雪衣「そしたら 失礼します。」
算太「あ~ 雪衣ちゃん 雪衣ちゃん。」
雪衣「はい。」
算太「その… そこの映画館 チャップリンが かかっとるんじゃ。 どうじゃ 一緒に見に行かんか?」
雪衣「仕事がありますから。 すみません。」
算太「うん そうか…。」
雪衣「あの… 算太さん。」
算太「ああ 何なら?」
雪衣「何で… 算太さんと 安子さんは この家におるんですか?」
算太「えっ…。」