連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第86話「1984-1992」【第18週】

ひなた「え… これ ホンマなんですか?」

榊原「うそ書いて どないするん。」

ひなた「そうですけど…。 こないに お客さん減ってるなんて…。 そらあ そんな気ぃしてましたけど こう はっきりと 数字で突きつけられると…。」

榊原「もともと映画村は 撮影所の危機を救うために作られた。」

ひなた「えっ… そうやったんですか。」

榊原「うん。 テレビが普及し始めた時 映画館の動員が落ちてしもてな。 このままやったら 映画がつくられへんいうて その製作費を稼ぐために出来たんが 映画村なんや。」

ひなた「知らんかった…。 知らんと9年も勤めてました。」

榊原「ハハッ…。 実際 映画村の収益で たくさんの時代劇映画がつくられてきた。 『妖術七変化』も その一つや。 でも… その収益自体が落ちてきてるんや。 このままでは 共倒れや。 撮影所も… 映画村も…。」

ひなた「なんとかせんと。」

榊原「うん。 それを 大月さんにも考えてほしい思てる。 どないしたら 映画村の来場者数を増やせるか。 アイデアを出してほしい。」

<二代目桃山剣之介による 『妖術七変化 隠れ里の決闘』は 話題を呼び ヒットしました>

<しかし それは条映時代劇が咲かせた 最後のあだ花でした>

第一スタジオ

<扮装や美術にお金のかかる時代劇は 時代とともに スポンサーから敬遠されるようになり… テレビ時代劇の本数も 徐々に減っていきました>

畑野「雨でぬれてるから くれぐれも くしゃみせんようにな。」

一同「はい!」

畑野「はい よ~い スタート!」

(カチンコの音)

「てやあ~!」

「くっ…。」

「やあ!」

「えいやっ!」

「があっ!」

<五十嵐も 大部屋のままです。 あの映画以来 せりふも 役名も もらったことがありません>

「『世を治めんがため 天荒を破る。 人呼んで… 破天荒将軍』。」

畑野「カット!」

(カチンコの音)

「はい オッケー!」

一同「オッケー!」

「は~い 次!」

五十嵐「はあ…。」

休憩所

ひなた「お疲れさま。」

五十嵐「ああ。」

ひなた「今日は このあと 何か入ってんの?」

五十嵐「いや 今日は さっきので終わり。」

ひなた「それやったら 第2スタジオ行ってみたら?」

五十嵐「何か撮ってるのか?」

ひなた「あれ。 今回は ホテルのアフタヌーンティーに 出かけた ぼたんが そこで殺人事件に出くわす話なんやて。」

五十嵐「それで?」

ひなた「そのアフタヌーンティーのシーン もうちょっと人欲しいて 監督が さっき探してはったから。」

五十嵐「ひなた。」

ひなた「うん?」

五十嵐「言っただろ。 俺は時代劇以外はやらない。 その志は変えたくないんだ。」

ひなた「あ… そやったね。 ごめん。」

五十嵐「いや…。」

ひなた「あっ そしたらさあ 今日 うちに晩ごはん食べに来いひん? お父ちゃんも お母ちゃんも 『最近 文四郎君 来いひんなあ さみしいなあ』て言うてる。 桃も今日から高校生や。」

五十嵐「ごめん。 今日は やめとく。 また今度。」

ひなた「うん。 分かった。」

五十嵐「じゃあ…。」

ひなた「うん。」

<ひなたは 27歳。 五十嵐は 29歳になっていました。 The years passed. Hinata turned twenty-seven and Igarashi turned twenty-nine>

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