夜ドラ「ミワさんなりすます」(第20回)

紀土「これから仕事?」

ミワ「ああ うん。」

<私に数々のマウントを取り…>

回想

紀土「実際に 俺は今 腕時計してないし 稼いでるし 社会に貢献してんだよ。」

回想終了

<八海サマの前では 何も言えなかった紀土くん>

回想

阿部「こいつ 俳優目指してたんすよ。」

紀土「おい バカ!」

回想終了

<彼は一体 どんな気持ちで 私の前に現れたんだろう>

紀土「なあ ミワちゃん。」

ミワ「何?」

紀土「何で俺のコメント消した?」

ミワ「えっ。」

<やっぱり 紀土くんだったのか!>

ミワ「いや 私は そんな SNSには関わってないから。」

紀土「へえ~ そうなんだ。 プロは入ってんの?」

ミワ「はい?」

紀土「だから SNS担当のプロはいるのかって 聞いてんの。」

ミワ「あ… いや 八海さんご本人とか マネージャーさんが 管理してると思うけど。」

紀土「え~ それって すごく危ないと思うけどなあ。」

ミワ「危ない?」

紀土「うん。 そうやって アップしちゃいけないものを うっかり上げて 取り消したり 炎上の初期対応でミスったり 俺から言わせると いくら宣伝とはいえ リスクに見合わないことやってんなあと 思うわけよ。」

ミワ「うん… 紀土くん そういうの詳しいんだっけ?」

紀土「まあ ITコンサル的なこと やってるからね。」

ミワ「へえ~ すごいね。」

紀土「いい代理店 紹介しようか?」

ミワ「代理店?」

紀土「マーケティングとかプランニングとか 投稿から反響分析まで 全部やってくれるよ。」

ミワ「いや 大丈夫だと思う。」

紀土「大丈夫じゃないから言ってんだけど。」

ミワ「うん 心配してくれて ありがとう。 じゃあ マネージャーさんに言っとくね。」

紀土「うん 連絡待ってるから。」

ミワ「じゃあ 私 あっちだから。」

八海邸

控え室

藤浦「今日は八海は 一日中ロケで不在です。 屋根の修理業者さんが来ますので 対応をお願いします。」

一駒「はい。」

藤浦「ほかに 何かありますか?」

池月「大丈夫です。」

一駒「はい。」

<よし コメント削除の件は 3人とも気付いてなさそう>

藤浦「じゃあ よろしくお願いします。」

<八海サマは今日一日不在か…>

ミワ「えっ!?」

一駒「あなた 熱あるんじゃない?」

ミワ「えっ あ… そうですか? 何か… 言われたら そんな気がしてきました。」

一駒「もともと ボーッとした人だとは思うけど いつになく ボーッとしてるから。 今日は そんなに忙しくないし 早めに帰って休んだら?」

ミワ「ああ…。」

ミワ宅

<それから私は 丸一日 眠り続けた>

八海邸

書斎

(ノック)

池月「失礼します。」

八海「はい。」

池月「失礼します。 郵便です。」

八海「ありがとうございます。 はい。 あれ? ミワさんは。」

池月「あっ 熱があるようで 昨日からお休みです。」

八海「熱ですか。」

池月「はい。」

八海「ふう…。」

ミワ宅

(チャイム)

ミワ「は~い…。 えっ…。」

<えっ どうして うちに!?>

八海「体調が悪いと聞いたので 差し入れを。」

<これは… 夢?>

八海「おおっと…。」

八海「ミワさんの好き嫌いが分からなくて ゼリー20種類 とりあえず 全部買ってきました。」

<八海サマ どうして そこまで… こんな私のために。 熱が上がっていくのが 自分で分かります>

ミワ「お茶… お茶いれます。」

八海「いや いいんです。 すぐに帰りますから。 はい 寝てて下さい。」

ミワ「はい…。」

八海「さすが… すごいコレクションですね。」

ミワ「私の人生の 全てなので。」

八海「『砂漠の塔』まである。 ミワさん。 実は… 前からずっと考えていたことがあって。」

ミワ「はい…。」

八海「そろそろ… 俳優をやめようかと。」

ミワ「…え?」

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