紀土「これから仕事?」
ミワ「ああ うん。」
<私に数々のマウントを取り…>
回想
紀土「実際に 俺は今 腕時計してないし 稼いでるし 社会に貢献してんだよ。」
回想終了
<八海サマの前では 何も言えなかった紀土くん>
回想
阿部「こいつ 俳優目指してたんすよ。」
紀土「おい バカ!」
回想終了
<彼は一体 どんな気持ちで 私の前に現れたんだろう>
紀土「なあ ミワちゃん。」
ミワ「何?」
紀土「何で俺のコメント消した?」
ミワ「えっ。」
<やっぱり 紀土くんだったのか!>
ミワ「いや 私は そんな SNSには関わってないから。」
紀土「へえ~ そうなんだ。 プロは入ってんの?」
ミワ「はい?」
紀土「だから SNS担当のプロはいるのかって 聞いてんの。」
ミワ「あ… いや 八海さんご本人とか マネージャーさんが 管理してると思うけど。」
紀土「え~ それって すごく危ないと思うけどなあ。」
ミワ「危ない?」
紀土「うん。 そうやって アップしちゃいけないものを うっかり上げて 取り消したり 炎上の初期対応でミスったり 俺から言わせると いくら宣伝とはいえ リスクに見合わないことやってんなあと 思うわけよ。」
ミワ「うん… 紀土くん そういうの詳しいんだっけ?」
紀土「まあ ITコンサル的なこと やってるからね。」
ミワ「へえ~ すごいね。」
紀土「いい代理店 紹介しようか?」
ミワ「代理店?」
紀土「マーケティングとかプランニングとか 投稿から反響分析まで 全部やってくれるよ。」
ミワ「いや 大丈夫だと思う。」
紀土「大丈夫じゃないから言ってんだけど。」
ミワ「うん 心配してくれて ありがとう。 じゃあ マネージャーさんに言っとくね。」
紀土「うん 連絡待ってるから。」
ミワ「じゃあ 私 あっちだから。」
八海邸
控え室
藤浦「今日は八海は 一日中ロケで不在です。 屋根の修理業者さんが来ますので 対応をお願いします。」
一駒「はい。」
藤浦「ほかに 何かありますか?」
池月「大丈夫です。」
一駒「はい。」
<よし コメント削除の件は 3人とも気付いてなさそう>
藤浦「じゃあ よろしくお願いします。」
<八海サマは今日一日不在か…>
ミワ「えっ!?」
一駒「あなた 熱あるんじゃない?」
ミワ「えっ あ… そうですか? 何か… 言われたら そんな気がしてきました。」
一駒「もともと ボーッとした人だとは思うけど いつになく ボーッとしてるから。 今日は そんなに忙しくないし 早めに帰って休んだら?」
ミワ「ああ…。」
ミワ宅
<それから私は 丸一日 眠り続けた>
八海邸
書斎
(ノック)
池月「失礼します。」
八海「はい。」
池月「失礼します。 郵便です。」
八海「ありがとうございます。 はい。 あれ? ミワさんは。」
池月「あっ 熱があるようで 昨日からお休みです。」
八海「熱ですか。」
池月「はい。」
八海「ふう…。」
ミワ宅
(チャイム)
ミワ「は~い…。 えっ…。」
<えっ どうして うちに!?>
八海「体調が悪いと聞いたので 差し入れを。」
<これは… 夢?>
八海「おおっと…。」
八海「ミワさんの好き嫌いが分からなくて ゼリー20種類 とりあえず 全部買ってきました。」
<八海サマ どうして そこまで… こんな私のために。 熱が上がっていくのが 自分で分かります>
ミワ「お茶… お茶いれます。」
八海「いや いいんです。 すぐに帰りますから。 はい 寝てて下さい。」
ミワ「はい…。」
八海「さすが… すごいコレクションですね。」
ミワ「私の人生の 全てなので。」
八海「『砂漠の塔』まである。 ミワさん。 実は… 前からずっと考えていたことがあって。」
ミワ「はい…。」
八海「そろそろ… 俳優をやめようかと。」
ミワ「…え?」