剛男「離農ですか…。」
タミ「陽平とも相談して それしかないかと…。」
陽平「靖枝ちゃん 道夫と彩子のことはね 天陽の絵を 全部売れば 当面の生活には 困らないだろうって 画廊の人が…。」
靖枝「嫌です! 私は 絶対に ここから動きませんから!」
陽平「靖枝ちゃん…。」
靖枝「あの人の絵も 絶対に売りません! 嫌です…。」
正治「したけど あんた どうやって…。」
靖枝「お義父さん! お義母さん! あの人は ここに帰ってきたんですよ! 帰ってきたんです! 家族と一緒に… いるために…。 陽ちゃんは 自分の畑で亡くなったんです…。 私には 陽ちゃんが あの日… 自分の命を この土地に… 土に… 命を まくために 帰ってきたとしか思えません。」
道夫「じいちゃん 僕がやる! 母ちゃんを助けて 僕が働くから! ここにいたいよ!」
彩子「私も働く! ここにいたい!」
タミ「そんな… 昔の天陽みたいなこと…。 (泣き声)」
正治「それなら じいちゃんだって働くさ…。」
陽平「父さん…。」
正治「この家族の言葉が… きっと あいつの遺言なんだろう。」
靖枝「はい…。」
馬小屋
なつ「陽平さん…。」
陽平「好きなだけ あいつの絵を見てやってくれ。 こんなふうに… あいつは ずっと ここにいたんだよな。 ここは あいつそのものだ。 絵を描いて売ることも あいつは 自然なことだと言ってたよ。」
なつ「自然…?」
回想
天陽「なあ 兄ちゃん。」
陽平「うん?」
天陽「こうやって 売るために 絵を描くことだって 狩りみたいなもんだよな。」
陽平「狩り?」
天陽「家族のために狩りをしてると思えば それも 自然なことだろ。」
回想終了
陽平「じゃあ なっちゃん 俺は向こうにいるから。」
なつ「はい… ありがとうございます。」