山田家
剛男「山田さん メーカーが提示する脂肪検査の内容に 農協としては 口を出せないのが現状でして…。」
正治「分かってます。 団結して 農協が まとめて 牛乳を メーカーに売るようになれば そんなことも なくなるんですよね? そのことに お宅の泰樹さんが 反対されてるんだとか…。 だから ほかの人も団結しないんですね。」
タミ「あなた そんな言い方は 泰樹さんに失礼よ。 誰のおかげで 私たち ここまで生き延びたと思ってるんですか。」
正治「分かってるよ。」
剛男「いえ 父のことは 必ず なんとかします。 それより 今は 少しでも 乳量を増やすことです。」
正治「質より量に頼りってことですか?」
剛男「まあ… そういうことです。 乳量を増やすには クローバーなどの 良質なマメ科を与えて下さい。 ただし やり過ぎには注意して下さい。」
天陽「ただいま。」
タミ「お帰り。」
剛男「天陽君。」
天陽「いらっしゃい。」
剛男「なつは どう? 頑張ってる?」
天陽「頑張ってますよ。 なっちゃん 何でも頑張るから。」
柴田家
旧牛舎
なつ『それを望まないことは あなたが 一番 よく分かってくれているはずです。 ポポロ』。
(鳴き声)
なつ『だけど 自分のことだけを 考えるわけにはいきません。 そもそも 私たちは その考え方が間違っていたんです』。
泰樹「なつ…?」
あんつ「あっ… はい?」
泰樹「なしたんだ? 何 悩んでる?」
なつ「あっ いや 何も… 何でもない。」
泰樹「いや いや…。 牛に相談してたべ?」
なつ「いや…。」
泰樹「何が間違ってる?」
なつ「あっ 違う 違う! そうじゃないの。 これは あの…。 もう やだ じいちゃん…。」
泰樹「何が間違ってたんだ…。」
居間
雪次郎「この本 読んで どう思った?」
なつ「私には難しかった。 何となくしか理解できてないと思う。」
雪次郎「俺だって そうだ。 きっと 世界中の俳優が そうなんじゃねえかな。」
夕見子「あんた 俳優なの? ただの高校生でしょ?」
雪次郎「先生は 自分らしくなんて言うけど 自分らしく演じることが 一番難しいんじゃねえかな。」
夕見子「たかが高校演劇でしょ?」
雪次郎「僕ら俳優は 役の心を見せるためだけに 集中しなくちゃダメなんだ。」
夕見子「農業高校生が 何を主張してんの?」
富士子「何だか 難しそうな話してるのね。」
明美「よく分かんない。」
なつ「それじゃあ う~ん… 自分らしく その役になりきるには どうしたらいいのさ?」
雪次郎「それは…。 想像力しかねえと思うんだ。」
なつ「想像力?」
雪次郎「うん。 このセリフの裏では 何を考えているとか この人物が どういう思いで生きてきたとか 自分自身の経験や記憶と重ねて それを 想像するしかねえんだよ。」
なつ「演じることも 想像力なのか…。 う~ん でも 難しい…。」
夕見子「要するにさ 台本は 与えられた環境にすぎなくて その中で生きるのは 自分自身だってことだよ。」
雪次郎「そのとおり! なして 夕見子ちゃんに分かるの!?」
夕見子「その本に書いてあったから。」
雪次郎「ああ…。」
明美「やっぱり合ってる!」
雪次郎「そう? いかった うれしいな!」
夕見子「うるさいよ あんたたち。」