川村屋
厨房
佐知子「なっちゃん これも お願いね。」
なつ「はい。」
<なつの東京での暮らしは こうして続きました。」
杉本「おい ここに また粉が落ちてる! お前が こぼしたんだろ?」
雪次郎「はい!」
杉本「床に 粉が落ちてたら 足滑らせて危ないと言ってるだろ。」
雪次郎「はい… すぐに掃除します。」
雪次郎「うわっ…!」
杉本「あっ さっき そこに 砂糖こぼしちゃったから ごめん そこも掃除しといて。 なあ 危ないだろ。」
雪次郎「はい…。」
<この新宿では みんなが 自分の生き方を 必死に探しているようでした。 そして なつは 6月の東洋動画の採用試験に向けて 絵の勉強も続けていました。>
ホール
なつ「どうでしょう?」
仲「この絵でも いけると思うよ。」
なつ「この絵でも?」
仲「うん。」
陽平「うん。」
仲「『白蛇姫』の制作が遅れてるんだ。 今は 一人でも多くの人材が必要だからね。」
なつ「本当ですか? 私は 仲さんから頂いたセル画を 大事にしています。 私のお守りです。」
仲「あっ… それは 責任 感じちゃうな。」
なつ「いや そういうつもりじゃないです。
陽平「責任 感じて下さいよ。 仲さんが なっちゃんに 希望を与えたんですから。 おかげで 僕の弟は寂しがってますよ。 天陽も 元気に 絵を描いてるみたいだ。」
なつ「はい。 私も負けません。」
陽平「うん。」
咲太郎「おお なつ!」
なつ「お兄ちゃん…。」
陽平「お兄さんなの?」
なつ「あっ はい。 こちら 東洋動画の仲 努さんと 山田洋平さん。 漫画映画を作ってる人で いろいろと教えてもらってんのさ。」
咲太郎「そうですか。 兄の奥原咲太郎です。」
佐知子「咲ちゃん 座ったら?」
なつ「あっ いえ…。」
咲太郎「おう さっちゃん コーヒーね。」
なつ「ちょっと!」
佐知子「なっちゃんも ゆっくりしてね。 休憩中でしょ。」
なつ「すいません… あの あんまり兄に構わないで下さい。」