道中
農夫「城ちゃん どこへ行かっしゃ~かね?」
布美枝「港の叔母ちゃんのとこ~。」
農夫「そげん急いで 転ぶなや!」
布美枝「うん!」
<叔母の住む 安来の港に向かって 布美枝は 遠い道のりを 走りだしていきました>
安来港
<港は魚市場に出入りする人達で 大層 賑わっていました>
(通りのざわめき)
(店員達の掛け声)
濱乃屋
店員「お嬢ちゃん お使いかね? そげなとこ おったら邪魔だぞ!」
布美枝「叔母ちゃん おらんかね?」
客「これ いくらかね?」
店員「はい 15銭になります。」
客「は~ もっと安くならんかねえ?」
店員「いや ならんわねえ…。」
布美枝「ああ 叔母ちゃん おった…。 よかった 元気にしちょ~。」
番頭「おかみさん ち~と 仕入れの事で。」
輝子「ああ。」
番頭「実は 浜の方で がいに取れて…。」
輝子「それは 帰って いけんねえ?」
番頭「へえ!」
布美枝「忙しそうだな…。」
店員「おい! 何をウロウロしちょ~だ? 親は どげしただ?」
布美枝「ああ…。」
回想
源兵衛「この だらずが! どこ行っちょった! どこ行っちょった! どこ行っちょった!」
<誰にも告げずに家を出てきた事を 布美枝は思い出しました>
回想終了
布美枝「いけん お父さんに叱られる…。 叔母ちゃん あれ? おらん…。 これ 叔母ちゃんに!」
店員「え? おっ?! おい! これ(キャラメル) どげす~だ?」
(汽車)
布美枝「あっ!」
「おい 危ねえぞ!」
(店員達の掛け声)
道中
<行きは 張り切って走った 6㎞の道が 帰りは ひどく 遠く感じられました>
(ヒグラシの鳴き声)
(鳥のはばたく音)
(奇妙な鳴き声)
(草履の足音)
布美枝「今 足音がしたが…。」
(布美枝の足音)
(つけてくる足音)
布美枝「誰か おるかねえ。 何か おる…。」
<誰も いない 田舎道 怪しい足音が 布美枝の後ろを ついてきたのです>
布美枝「いや~っ!」