連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第1話「ふるさとは安来」

昭和十四年 夏

<見合いの顛末は また後ほど お話するとして…。 昭和14年 布美枝が7歳の時から 物語を始める事と いたしましょう>

♬~(ラジオ体操)

指導員「ほい 参加賞。」

子供1「赤いあめ玉だわ。」

指導員「ほい 参加賞。」

子供2「だんだん。」

指導員「ほい 参加賞。」

布美枝「あれ… あめ玉?」

野村チヨ子「先生! フミちゃんは 皆勤賞だけん 賞品も キャラメルじゃないかね?」

指導員「チョット見してほしいんよ。 や お前 毎日来ちょったか! ちっとも気づかだったわ ハハハ! はい! 皆勤賞のキャラメル。」

布美枝「だんだん…。」

チヨ子「フミちゃん いっつも 忘れられてしまうな。」

布美枝「うん… なしてかなあ?」

チヨ子「おとなしすぎるけん おるか おらんか分からんもん。」

布美枝「そげかな…?」

チヨ子「そんなら明日 学校でな。」

布美枝「私 そげん目立たんかなあ…。」

(鐘の音)

<安来は 島根県の東の端にある 歴史のある町です。 中海に面した港から 6kmほど 内陸に入ったところに 布美枝のふるさと 大塚の町があります。 周りは一面の田畑。 奥出雲の 山並みの向こうに見えるのが 『出雲富士』とも呼ばれる『大山』です>

<この頃の我が家は 先代から続く 呉服店を営んでいました>

飯田家

3人「よいしょ! よいしょ! よいしょ! よいしょ!」

飯田ユキエ「お母さん おひつ。」

ミヤコ「ああ。 よっ! お願いね。」

ユキエ「はい!」

(3人の掛け声)

<父と母 娘が3人 息子が2人。 そして 祖母の私。 飯田家は 総勢8人の大家族です>

布美枝「お母さん 見てごしない。 今日 体操で これ もらったよ。」

ミヤコ「ああ そげかね。」

布美枝「おばば ほら。 皆勤賞だよ。」

登志「ああ よかったな。」

布美枝「ちっとも聞いちょらん!」

登志「ああ ちょっと 布美枝!」

布美枝「何?!」

登志「みそが切れちょ~わ。 みそ 取ってきてごせ。」

布美枝「え~。」

みそ部屋

布美枝「みそ樽 奥かなあ?」

(物音)

布美枝「何の音?」

(天井からの音)

布美枝「何か おるかなあ…。」

(音 大きくなる)

布美枝「あ きゃっ!」

源兵衛「何を びくびくしちょ~だ!」

居間

源兵衛「布美枝は 2年生にも なって 弱虫で えけんのう。」

布美枝「だけん 変な音がして…。」

源兵衛「お前やち 夏休みの宿題は 済んどんのか? 明日から学校だけん よく確認せえよ。」

子供達「はい。」

布美枝「あのね さっき…。」

源兵衛「おい 飯 お代わり。」

ミヤコ「はい。」

飯田暁子「今日 裁縫に行ってくるわ。」

ユキエ「あ 私も。」

布美枝「みそ部屋の天井で…。」

飯田哲也「俺 山に行くけん。」

登志「あ 弁当は?」

哲也「いらん。」

源兵衛「弁当は持ってけ!」

哲也「いらん。」

源兵衛「お握りじゃけ持ってけ!」

登志「うん お握り作ってやる。」

布美枝「何か 音が…。」

飯田貴司「ああ~!」

(貴司の泣き声)

登志「早こと 拭くだが!」

布美枝「誰も聞いてくれん…。」

源兵衛「ピーピー泣くな もう!」

<大家族の中で 布美枝の小さな声は しばしば かき消されてしまうのでした>

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク