東洋新聞
学芸部
田良島「真面目で 正直で 明るくて 人柄は 100点満点。 オーナーが期待されるのも納得です。」
野中「なあ ボーヤさん。」
暢子「はい。」
野中「ここに置いといた原稿 どうした?」
暢子「えっ 何の原稿ですか?」
野中「戦後経済の連載。 ここに置いといたんだよ。」
暢子「えっ? 机の上は紙だらけだし。 はぁ… どれがどれだか。」
野中「さっき この辺り 片づけてただろ? おい どうすんだよ? 締め切り近いんだよ!」
和彦「これですか? これ。」
野中「これこれ!」
和彦「こっちのデスクに 紛れてました。」
野中「えっ… そっか。 ごめんごめん。 俺のうっかりだった。」
和彦「あの 沖縄の戦後経済についても 触れていましたが ドッジラインと B円についての解釈は 間違ってると思います。 それに B円には硬貨がなく 全て紙幣でした。」
野中「読んだの?」
和彦「すいません。 気になって。」
田良島「青柳は 沖縄に詳しいからなあ。」
暢子「あおやぎ? 沖縄?」
田良島「おお この春 学芸部に来た 青柳和彦。 取材で北海道に行ってたから 会うのは 初めてだな。 で こちらは 比嘉暢子さん。 沖縄出身。 世話になってるイタリア料理店に オーナーの紹介で 今 アルバイトに来てもらってる。」
和彦「もしかして…。」
回想
暢子「食べる?」
和彦「要らない。」
和彦「いつか 東京に来いよ。 おいしいもの 世界中のうまいもの 食べさせてやるからな!」
回想終了
暢子「まさかやー! しんけん? 和彦君?」
和彦「やっぱり 暢子!?」
暢子「はっさ! 和彦君!」
和彦「アハハッ 懐かしいな。」
暢子「和彦君も 何か 立派になったね~!」
和彦「そうかな?」
暢子「うん。 デージ 似合ってる!」
和彦「本当? よかった。」
廊下
和彦「ここの食堂のカレーがさ 絶品なんだよ。 卵の黄身が上に のってて…。 すっごい おいしいの。」
愛「和彦!」
和彦「あっ 愛。 ちょうどよかった 紹介するよ。」
愛「うん。」
和彦「比嘉暢子。 ほら 昔 沖縄で…。」
愛「あっ 山で 木の実や草を食べてた女の子?」
和彦「そうそう やんばるの。」
愛「アハハ。 暢子さんの話 何回も聞いてました。 初めまして 大野 愛と申します。」
暢子「比嘉暢子です。」
和彦「今から食堂。 どう? 一緒に。」
愛「ごめんなさい。 私 締め切りが。」
和彦「大変だな。 じゃあ また。」
愛「うん。 あっ ちょっと待って。」
和彦「ん?」
愛「この柄 すごくいいけど シャツは 薄い青系の方が合うかしら?」
和彦「いや 青いシャツで取材には行けないだろ。」
愛「あら シャツが 取材するわけじゃないでしょ? 固定観念に縛ら過ぎると 時代に乗り遅れるわよ。 暢子さん また。」
愛「ご苦労さまで~す。」
和彦「行こう。」
暢子「あっ うん。」
和彦「本当に おいしいんだよ。」
暢子「へえ~ ほかには何があるの?」