連続テレビ小説「ちむどんどん」91話「愛と旅立ちのモーウイ」

レストラン・フォンターナ
厨房

暢子「お待たせしました。 お話しって 何ですか?」

二ツ橋「ご存じのとおり 私は かつて 自分の店を潰したことがあります。 矢作さんの店も 長くは続きませんでした。 暢子さんは 今まで フォンターナで 何を学んできたんですか?」

二ツ橋「もっともっと この店で オーナーのもとで イタリア料理を極めたいとは 思わないんですか? 故郷の料理を 大事に思う気持ちは分かる。 だけど ここまで イタリアンの修業を積んで もったいないじゃないですか。」

暢子「それは…。」

二ツ橋「夢や理想だけで 飲食店は やっていけない。 オープン当初は 知り合いが集まり にぎわったとしても 半年先 1年先 その人気が続く保証は 全くない。」

暢子「簡単ではないことは よく分かっています。 フォンターナで働いてきたことに 誇りも持っています。 このお店で うちが学んできたことは 無駄にはならないし 絶対に 無駄にはしません!」

二ツ橋「オーナーの気持ちも 考えてください。 オーナーは 今まで 独立したいと言った従業員を 止めたことなど 一度もありません。 ただ 相手が 暢子さんとなると…。 本心は…。」

暢子「どう思ってるんですか?」

二ツ橋「一つだけ 約束してください。 独立しても 月に一度… いや 週に一度は 時間を作って この店に顔を出し オーナーに お店の状況を報告すること。」

暢子「はい。 うれしいです。 独立しても うちは ず~っと フォンターナの一員でいたいと 思っていますから。 ありがとうございます。 失礼します。」

(足音)

(カーテンを閉める音)

養豚場

賢秀「ということで また 辞めさせてください!」

清恵「ありえない。 社会人失格。 もう二度と戻ってこないで。」

賢秀「今回は 戻らない。 戻るわけにはいきません! 貧しい妹の 力になってやりたいんです!」

清恵「貧しいあんたが どうやって妹の力になるの?」

賢秀「だからよ。 店を出す金が足りなくて 泣いてる妹がいる。 そこに ドカ~ンと 一発当てた俺が ふらっと現れる。 夕暮れ時 鶴見の労働者たちが家路を急ぐ頃…。」

賢秀「『暢子 これ 少ないけど 結婚祝ヤサ 好きに使いな』。 ポンと 札束を出す。 暢子は 腰を抜かして 俺に抱きついてくる。『あっ ちょっ 暢子…』。『ニーニー ありがとう。 いつかきっと 倍にして返すから』。 俺は 父親代わりの長男として 当たり前のことをしたまでよ』。」

寛大「ふわ~。 ふん いい兄貴だ。」

清恵「筋書きどおりにいけばね。」

賢秀「やんばるの母ちゃんも 泣いて喜ぶ。『さすが賢秀 沖縄の一番星さ』。 歌子も涙を流す。」

寛大「分かった。 お前の話は よく分かった。」

清恵「もう 早く行って。」

賢秀「だからよ。 その 先立つものが…。 ビッグビジネスマンとして 打って出るための資本金です!」

寛大「バカだねえ…。」

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