夜ドラ「作りたい女と食べたい女」(第27回)

野本宅

野本「どうぞ~。」

春日「甘い匂いがしますね。」

野本「あ… そう。 帰ってきてから あずき炊いてたんだ。」

春日「あずきですか?」

野本「うん。 お母さんがね お米と一緒に送ってきてくれて。」

春日「そうでしたか。 あんこって 手間がかかりそうですけど。」

野本「う~ん でも そうでもなかった。 もくもくと煮込んで アクを取っての繰り返しが 結構 リフレッシュになって。 ちょっと いろいろ考えて モヤモヤしちゃってたから。」

春日「あの いろいろ考えてというのは 昼間のことですよね。」

野本「うん。」

春日「私も運転しながら いろいろ考えていました。 今日の不動産屋の方も 悪気があるわけではないですし 私たちも つきあっていることを 伝えたわけではないですが でも 少し傷つきました。」

野本「そうだね。」

春日「あれでは 同性同士のカップルは 真剣なつきあいをしていない ということになってしまいますよね。」

野本「結婚を前提に できないからね。」

春日「はい。」

野本「私たちだって つきあったばかりだけど 真剣に交際してるよね。」

春日「しています。」

野本「うん。 今日 友達って言っちゃってごめんね。 不動産屋さんに聞かれて。 とっさに どうしようって。」

春日「いえ あの状況じゃ しかたないです。 周りに人もいましたし。」

野本「うん…。」

春日「同性婚ができないことや それに関する政治家の発言は ニュースで目にしてましたけど。 こういうところで 自分たちに影響するんですね。」

野本「本当だね。 はあ… 何か疲れたね。 今日。」

春日「はい 疲れました。」

野本「何もやってないんだけどねえ。 何にも進んでないし… はあ 何か落ち込む。」

春日「でも あんこ作りましたよね。」

野本「あ そうだ。 あんこは作った。 食べよっか? あんこ。」

春日「はい。」

野本「うん。 じゃあ…。 あ どうやって食べる? そのまま食べてもいいし アイスか パンもあるし。」

春日「野本さん もしかして あんバタートースト できますか。」

野本「それだ…。 やろうやろう!」

(トースターの音)

野本「焼けた!」

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