一風館
ダイニング
みづえ「恵里ちゃん 合格しそうなの?」
島田「普通に考えたら 難しいね。 でも あの子の事は 分からない。」
みづえ「そうよねぇ。」
こける恵里
みづえ「あ!」
島田「勉強のさせすぎかな?」
みづえ「違うわ。 あの顔は 勉強の事じゃない。 ウフフフ 恋の顔よ。」
島田「どうして そんなことが 分かる?」
みづえ「私も 女ですもの。」
グアテマラ
真理亜「え~!」
恵里「そうなんです。」
真理亜「会ったの? え ホントに? 文也君に?」
恵里「はい 会ってしまいました。」
恵達「どこで?」
恵里「病院さ あの病院で実習してる 医大の学生だった 文也君は。」
恵達「へえ…。」
真理亜「会ってどうしたの? どうだった?」
恵里「どうって?」
真理亜「じれったいわね! どうだったのかって 聞いてるの。」
恵里「カッコよかったさぁ 文也君。」
真理亜「それで? それで?」
恵里「それで 会って 『恵里だよ』って。」
真理亜「それから?」
恵里「それから 『元気?』とか『皆は元気?』とか。」
真理亜「ああ イライラするわねぇ! それから。」
恵里「『あの低学年だった恵達が ロックやってるんだよ』とか言って。」
真理亜「どうでもいいのよ そんなことは それから?」
恵達「『どうでもいい』?」
恵里「それぐらい かな?」
真理亜「は?」
恵里「うん それぐらいかな 文也君 用事があったみたいで。」
真理亜「肝心の話は? してないの? してないわけ? 『子供のころの結婚の約束 覚えてる?』って 聞かなかった?」
頷く恵里
真理亜「『私は バカみたいに ず~っと そう信じてた』と言わなかった?」
恵里「『バカみたいに』って 何ですか。 言ってません。」
真理亜「なんで? なんでよ? バカ!」
恵里「『バカ』って。 言えなかったんです。 なんか もう 頭 混乱するし ドキドキするし 言葉なんて もう まともに出てこなかった 何も言えなかったんですよ。」
真理亜「な~んだ ベラベラベラベラ しゃべるのに バカみたい ホントに。」
恵里「7年ぶりなんですよ いきなり ずっと会いたかった人と 突然 心の準部もなしに 出会ってしまったんですよ。 そういう時の 人間の気持ちを 考えてみてくださいよ。」
真理亜「考えられないわよ そんな人の気持ちなんて…。」
恵里「なんでですか? 人の気持ちを 考えるのが 作家でしょう? それが 仕事でしょう?」
真理亜「ん?」
恵達「そうれは そうだな。」
恵里「でしょう?」
真理亜「私はね 興味があるのよ その文也君に。」
恵里「『興味』?」
真理亜「そうよ あんたが 後生大事に 胸にしまっていた その約束をさ 向こうが覚えているのかどうか 信じているのかどうか そこに 興味があるの。」
恵里「覚えてますよ。」
真理亜「分かんないでしょ! その話 してないんでしょ! だったら そんなの分からない! もう なんなの!」
恵里「そうですけど そんなに 怒らないで下さいよ。」
真理亜「怒るわよ!」
恵達「で どうだったの? 会う約束とか しなかったの? 電話番号 交換したりとかさ。」
真理亜「あんた 冷静ね いつも。」
恵達「お陰さまで そうせざるを えない状況で 育ってきたので。」
真理亜「なるほど 大変ね あんたも。」
恵達「はい。」
恵里「次に会う約束は してないけど…。」
恵達「しなかったたわけ?」
恵里「でも 文也君 最後に 『じゃ また』って 言ってたさぁ。 それって…。」
真理亜「誰にでも言うのよ。 死んでも 二度と会いたくない 人間以外にはね『じゃ また』と。」
恵里「あ!」
恵達「へえ…。」
メモを奪う真理亜w