古波蔵家
玄関前
恵文「(ため息)」
居間
恵文「ただいま」
勝子「お帰りなさい」
恵理「お帰り お父さん!」
恵文「あっ 恵理 早かったねぇ もっと遅いかと思っていたさ」
恵理「うん まあね」
文也「お疲れさまです」
恵文「どうもです~ 和也 よく来たな~ 大きくなって 大きくなって!」
恵文「うわ~ すごいね 今日は 恵理たち 久しぶりだからねぇ 何が? どうしたの?」
勝子「恵文さん」
恵文「え… あ… ごめんなさい」
勝子「何が? 何か悪いことしたの?」
恵文「えっ? いや あ… 違うの?」
恵理「(ため息)」
ハナ「バカだねぇ 本当に」
恵文「えっ?」
文也「おとうさん」
勝子「恵文さん」
恵文「は… はい」
勝子「長い間 ご苦労さまでした お疲れさまでした」
一同「お疲れさまでした!」
恵文「うん? あっ じゃあ このごちそうは…」
ハナ「ほれ これも!」
恵尚「上等な酒だねぇ」
ハナ「お前のじゃないよ」
恵尚「分かってるよ おばぁ」
恵理「はい これ 私たちから」
恵文「ありがとう ありがとう ありがとうねぇ!」
勝子「本当に お疲れさまでしたね」
(拍手)
恵文「いや~ うれしいさぁ いじわるだねぇ もう~ 全然 忘れてるのかと思ったのに」
恵理「でも お父さんが定年かぁ そんな年なんだねぇ」
恵尚「だっからよねぇ」
恵文「フフフ… 全然 そんなふうには 見えないでしょう」
ハナ「今まで よく クビにならなかったねぇ 社長さんは 偉いさぁ」
恵文「おばぁ!」
恵理「おばぁ いいねいいね」
勝子「まあ 一区切りさぁね まだまだ 頑張ってもらわないとね」
恵文「はい でもさ 今日は さすがに 車を走らせていてさぁ 乗ってる車と お別れするわけよ 今日でね なんか しんみりしてしまってさ… お互い よく頑張って走ったねぇ 車のこと ねぎらいながら 味わうように 一日走ったわけさ」
勝子「そう であるよねぇ 車も頑張ったさぁ」
恵理「へぇ~ なんか いい話だね」
文也「なんか あれですかね 戦国の武将みたいな 関係ですかね」
恵文「そうさぁ いいこと言うね 文也君」
文也「えっ ハハハ… そうですか」
恵文「ま とにかく 食べますか 飲みますかね」
勝子「であるねぇ」
恵尚「飲もうねぇ!」
勝子「乾杯しよう! 文ちゃ~ん はい」
恵文「あい」
勝子「じゃあ!」
一同「乾杯!」
文也「うん?」
恵理「どうしたの?」
文也「いや なんか 恵理が那覇に来ると 必ず現れる男が…」
誠「こんばんは~!」
恵理「あっ」
文也「やっぱり」
誠「ハイサイ 皆さん!」
恵理「誠!」
誠「恵理 やっぱり いたさぁ」
流美子「本当だ この人がさ 街 歩いてたら いきなり『恵理が沖縄にいる 俺には分かる』って… 気味悪いさぁ」
誠「何 言ってる しかたないさぁ 運命の赤い糸ってやつで 結ばれてるからねぇ 俺と恵理は」
恵理「結ばれてないよ」
流美子「ちょっと あんた!」
誠「だから 俺が恵理を好きなのは ライフワークみたいなもんだからさ」
流美子「何が ライフワーク? このバカが!」
誠「恵理 俺は お前が おばぁになっても 大丈夫だからよ」
恵理「はあ? 私が 大丈夫じゃないさ 何 言ってるの」
恵文「まあまあ… ほれ 入って!」
誠「あい おとうさん さっき見ましたよ 国際通り 飛ばしてましたねぇ かわいい女の子 たくさん 乗せてから お金 取らなかったでしょう」
恵文「ま ままま… 誠! 何を言ってるか! へへへ… へへへ… じゃ 改めて 乾…(取り上げる勝子) これ いただこうか(取り上げる勝子) あれま… あれ もぉ~」
恵尚「あきさみよ~ ありゃ… あれ…」
恵理「どうしたの 兄い兄い?」
恵尚「正一 忘れてたねぇ 絶対に 今 どっかに隠れてて タイミング 見計らって 来るよ 正一 あそこかね 正一!」
島袋「こんばんは 晩ご飯 いただきにきました~」
恵尚「なんで? なんで そこから 出てこられるわけ?」
島袋「何 言ってるの あんたは… ねぇ あい 恵理ちゃんさぁ! あい みんなも一緒で… どうも あぎじゃびよ 何ですか これ すごい ごちそうですね くわっち~さびら!」
勝子「あっ それ 文ちゃんの!」
恵文「そうさ 俺の!」
島袋「あい 手 洗ってない」
島袋「何やってるんですか? 仲のいい夫婦ですね ちょっと 手 洗ってきますね」
ハナ「似たもの夫婦だね」
勝子「えっ?」
恵文「うん?」
恵理「なにやってるの~」
恵文「あ! もう~」
恵理「早く 座って座って」
勝子「食べようねぇ」
文也「食べましょう ね」
恵理「食べよう 食べよう」